八丁原発電所の全景。

2016年11月号記事

未来産業のたまご 第8回

九州電力八丁原発電所

火山がもたらす純国産エネルギー

火山大国・日本ならではの純国産エネルギー「地熱発電」。 日本が培ってきた技術と、これからの可能性に注目した。

筋湯温泉の一角には足湯も。

大分空港からバスや電車を乗り継ぎ約4時間。阿蘇山や由布岳に囲まれた九重連山に向かう。曲がりくねった山道を抜けて、バスを下車したのは「筋湯温泉」。温泉街の側溝からもくもくと立ち上る湯気に地熱を感じながら歩いて20分。日本最大の地熱発電所、九州電力八丁原発電所に到着した。

日本では古くから、火山のエネルギーは「温泉」という形で利用されてきた。これを電気に変えるのが、地熱発電だ。

燃料なしで発電

副所長の川副聖規氏。発電所の心臓部であるタービンとともに。

仕組みはシンプル。地中から噴き出す高温の熱水から出る蒸気でタービンを回し発電する。

発電所の中心には、地下からの蒸気や熱水を導くパイプが並ぶ。何本ものパイプがくねくねと連なり、アスレチックの骨組みを思わせる。

燃料なしで発電できる地熱発電は、資源の少ない日本にとって重要な電源だ。

日本列島の地下に眠るとされる地熱資源の量は推定2300万キロワットで、世界第3位とかなり多い。ただ、現在発電に使われているのはそのうち2パーセントほどだ。地熱資源は火山の近くに眠るが、国立公園の中にあることが多く、開発が制限されていた。近年は規制緩和が進み、新たな地熱発電所の建設も予定されている。

「純国産のエネルギーを供給できることを誇りに思います」

八丁原地熱発電所の副所長である川副聖規氏は、30年近く地熱発電の現場で働いてきたベテランだ。

オイルショック以降、日本は燃料を輸入に依存する火力発電の割合を減らすべく、「電源の多様化」に取り組んできた。その中では、原子力発電を中心に新しい電源が開発されてきた。

再生可能エネルギーの一つである地熱発電には、太陽光や風力などと大きく違う点がある。

「昼夜を問わず、天候を問わず、安定して発電できます。発電設備の利用率も、太陽光が1割、風力も2割ですが、地熱は7~8割。電源としての信用の度合いが違います」(川副氏)

太陽光を発電に利用する場合は、バックアップのために火力発電所が必要になる。しかし地熱発電所ならその必要がない。電源の多様化に貢献できるのだ。

「石油依存」からの脱却を目指してきた日本

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オイルショック以降、日本は化石燃料(石炭・石油・液化天然ガス)への依存を減らすため、原子力や再生可能エネルギーの活用を進めてきた。東日本大震災後、各地の原発が停止したことで再び化石燃料への依存が高まり、電気料金の高騰につながっている。(日本の電源構成の推移。資源エネルギー庁ウェブサイトを元に編集部作成)