「生前退位」の意向を宮内庁の関係者に示したと報じられている今上天皇は8日、ビデオ メッセージでお気持ちを表された。

その内容に対して、「体力的な衰え」と要約して報じられているが、それほど単純ではない。

「高齢化」以外に強調された「象徴天皇の存続」

例えば、ビデオメッセージは、以下のような言葉で締めくくられた。

「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」

同様の表現としては、「伝統の継承者として、これを守り続ける責任に深く思いを致し」といったお言葉もあった。

つまり、「象徴としての天皇が安定的に続いていく」ことを願うお気持ちが、再三にわたり強調されているのだ。

これを単に、「体の衰えで、国事行為や各地への御訪問ができなくなれば、天皇の仕事が一時期途切れる」というだけの解釈で終わっていいのだろうか。

今上天皇守護霊が明かす真意とは?

大川隆法・幸福の科学グループ総裁は、「お気持ち表明」に先立つ7月20日に、今上天皇の守護霊を呼び、その真意を聞いた。

この内容は、同30日に緊急発刊された『今上天皇の「生前退位」報道の真意を探る』(大川隆法著、幸福の科学出版)に収められている。

そこで明かされた真意は、参院選にて改憲勢力が3分の2を取る勢いだったことに深く関係していた。

自民党は、国民に改憲の真を問うことなく、「アベノミクスの是非」を争点として、大きく支持を集めた。国論がまだ二分されている状態で、改正憲法を公布したくない――。こうしたお気持ちが、背景に強くあられたようなのだ。

天皇の政治責任は皇室の危機と裏表

その理由は、天皇陛下が政治責任を負うことになるからだという。先の大戦では、戦争責任を巡って、皇室は存続の危機に立たされた。

また自民党の憲法草案では、天皇を元首として位置づけようとしている。その政治責任をさらに強める方向だ。

天皇陛下が元首の立場に立てばどうなるか。アジアの国際情勢が緊迫する中、もし戦争が起き、日本が再び敗戦すれば、皇室存続の危機が再びやってくる。これは、お父上であられる昭和天皇や、皇室の存在が危機に立たされているのを目の当たりにされている天皇陛下にとって、決して杞憂ではない。

やはり天皇は、「政府の政治判断の過ち」の責任を被せられるような存在であってはいけない。この国の法律や政治がどうなろうと、天皇は尊い存在であり続けなければならないのだ。

天皇の役目は政治ではなく祈り

では、政治責任から離れた天皇陛下の本来のお仕事とは何なのだろうか。今上天皇はビデオメッセージでこう語られている。

「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」

つまり、「国のために祈り、国民の心に寄り添う」ことが天皇の使命だ。これは、天皇が天照大神の子孫であり、日本神道の祭司長、神主のトップであるという原点に照らしてもいえることだ。ビデオメッセージの中でも「殯(もがり)」という神事について触れられていた。

ただ、この宗教的な仕事の意義を理解する国民が、政治家も含めてどれだけいるのだろうか。

ここの理解が薄いゆえに、天皇に政治責任を負わせかねないような憲法草案が生まれる。また、今上天皇は働いている姿を見せて、「国民の総意」を得るため、お体にムチを打たれて、膨大な国事行為や、日本各地への御訪問をしなければいけない。霊言は、こうした現状へのお苦しみも滲ませるものとなった。

天皇の本来のお仕事とは何か――。今回の「お気持ち表明」は、そのことを改めて考えさせられる機会となった。

【関連書籍】

幸福の科学出版 『今上天皇の「生前退位」報道の真意を探る』 大川隆法著

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