日本の首都のリーダーを決める都知事選もいよいよ終盤戦となった。

本欄でも指摘してきたが、都知事選の報道は、ほとんどが"主要"3候補に偏っており、テレビは3候補の報道に約97%の時間(7月18日~22日)を、新聞は3候補の報道に約99%の紙面(25日付)を割いていた。

もちろん、各メディアの立ち位置や候補者の運動量によって報道にある程度の差が出ることはやむを得ない。また、3候補者以外の候補者による抗議の後、フォローするかのように報じたメディアもあった。

しかし、都知事選の期間全体を見て、その偏りには異常性がある。

こうした状況は、放送法第4条2項の「政治的に公平であること」同じく4項の「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」や、「正確で公正な記事」を謳った日本新聞協会の「新聞倫理綱領」に反している。

「報道しない自由」を濫用

さらにいえば、マスコミの偏向報道は、公職選挙法違反の疑いも濃厚だ。

公職選挙法第148条は、新聞や雑誌の選挙報道の自由を認めているが、次のような但し書きがある。

「但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」

21人もの立候補者がいるのに、連日マスコミに登場するのは3候補だけというのは「事実の歪曲」に当たるのではないか。少なくとも、「表現の自由」を盾に、「報道しない自由」を濫用して、選挙の公正を害していることは間違いないだろう。

そもそも公職選挙法は、お金や組織のない新人も公平に選挙戦を戦えるようにという目的で定められたはず。民主主義の担い手を自負するマスコミが、公職選挙法の精神に反して"主要候補"を勝手に選出し、選挙の公平性を害していることは問題がある。

選挙予測報道も公職選挙法違反?

また、マスコミが行う選挙予測報道にも問題が多い。

公職選挙法第138条の3では、「何人も、選挙に関し、公職に就くべき者を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない」と定めている。

この規定はもちろんマスコミも例外ではないが、「『投票』ではなく、調査員が面接や電話で口頭回答を得る方法で調査をした場合は、本条でいうところの『人気投票』にあたらない」という強引な解釈によって、選挙予測報道は許されている。

だが、本条が設けられたのは、選挙期間中に「○○がリード」と報じることで、有権者の興味を失わせたり、勝ち馬に乗ろうとする効果を生んだりして、選挙結果を左右する危険性があるからだ。

「投票」によるものではないから問題ないとして選挙予測報道を繰り返すのは、非常に身勝手かつ「マスコミによって世論が誘導できる」という傲慢な考え方と言わざるを得ない。

さらに言えば、3候補にだけこれほど大きな紙面や放送時間を割いているのは、マスコミが特定の候補者に対してだけ「広告宣伝費」を提供しているようなもので、事実上の利益供与とも言える。

他の候補が同程度の露出をしようとして広告を出せば、最低でも数億円、場合によっては数十億円くらいの費用がかかってもおかしくない。

「1票の格差」などが問題になっているが、その前にマスコミ報道の偏りを改め、有権者が正しい情報に基づいて1票を投じられるような環境を整えるべきではないだろうか。

(小川佳世子)

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2013年10月号記事 マスコミの選挙予測報道は公職選挙法違反か- The Liberty Opinion 2

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