中国の身勝手な行動を止められるか――。

南シナ海で、中国が人工島を造成して軍事基地化したり、領有権を主張することは「国際法違反である」として、フィリピンが中国を訴えている国際裁判について、オランダ・ハーグにある国際仲裁裁判所が近く、判決を下す。22日付朝日新聞が報じている。

南シナ海問題では、初めての国際司法判断になるため、注目が集まっている。

ミサイルを配置し、実効支配を行う中国

南シナ海では、中国、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、台湾、そしてフィリピンの6カ国が特定の海域や島、岩礁、環礁などの一部や全体の領有権を主張し合っている。1970年代に石油や天然ガスなどの資源が豊富にあることが分かってからは、これらの資源や海洋資源の確保をめぐって、領有権問題が過熱している。

圧倒的な軍事力を誇る中国は、「九段線」という独自の境界線を掲げ、南シナ海のほぼ全域に自国の権利が及ぶと主張。南沙諸島では7つの岩礁を埋め立てて、滑走路を含む人工島をつくり、西沙諸島にはミサイルまで配置し、実効支配をしようとしている。

フィリピンが訴える3つのポイント

今回の仲裁裁判所におけるフィリピンの訴えは、主に3つの問題点の判断を求めるものだ。

  • (1)南シナ海の水域、海底、そこに埋蔵される資源に対し、中国が、歴史的に自分たちのものだとする主張(九段線)が合法的か否か。

  • (2)南シナ海の岩礁周辺に、排他的経済ゾーンを設けるという中国の要求は、国連海洋法条約に矛盾するのではないか。

  • (3)そうした中国の数々の要求は、フィリピンの主権と法律を侵害しているのではないか。

仲裁裁判所の判決が、中国の主張する「九段線」の違法性を認めたり、人工島は領海の基点にならないと判断すれば、中国は実効支配の法的根拠を失う。

そうなれば、中国に対する、国際社会の批判はいっそう強まるが、問題は、その判決を中国に履行させる強制的な手段がないことだ。

はじめから、判決を無視するつもりの中国

そもそも2006年に国連海洋条約を締結した際、中国は、国際法廷の判決に従わないと宣言していた。

中国政府・外交部の王毅部長(外相)は、中国以外にも30カ国以上が同じ宣言をしたとして、これは海洋条約298条が定めた「権利」だと主張。だから中国が法廷の判決を受け入れないのは、完全に合法的な行為だと論じている。

この調子なら、たとえ、仲裁裁判所が中国の違法性を認めても、中国は無視し続ける可能性が高い。元々、一党独裁の中国は法治国家ではないので、国際法も突っぱねるということか。しかしそれは、国連の常任理事国という立場から見て、あまりに無責任であり、あまりに非常識である。

国防の危機に向き合わない候補者に、政治の舵取りは任せられない

日本は、石油の約8割を、南シナ海のシーレーン(海上交通路)を経由して輸入している。中国が南シナ海を手中に収めれば、日本の生殺与奪の権は中国に握られてしまう。

このように南シナ海で緊張が高まる中、本来、日本の参院選において、各政党・各候補者たちは、国防政策のみならず、中国への態度を明確にしなければならない。毅然と立ち向かうのか、それとも、座して死を待つのか……。

国防という国家的課題に対して、真正面から向き合わない候補者には、この国の政治の舵取りを任せることはできない。いま、有権者に「新たな選択」が、求められている。

(小林真由美)

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