バラまき合戦でいいんですか? ――「福祉大国」から「未来投資国家」へ - 編集長コラム 参院選・特別版

バラまき合戦でいいんですか? ――「福祉大国」から「未来投資国家」へ - 編集長コラム 参院選・特別版

 

2016年8月号記事

 

編集長コラム 参院選・特別版

 

バラまき合戦でいいんですか?

――「福祉大国」から「未来投資国家」へ

 

「低年金者への給付金(年金増額)」「保育士や介護職員の給与引き上げ」「返済不要の給付型奨学金」

 自民、民進、公明、共産の各党がみな、7月の参院選で同じ政策を掲げている。

 これら各党の「共通政策」を支える考え方は、「政府が高齢者や子供の面倒を見ますから、安心してください」というもの。しかし、この福祉国家の理想は、必ず破たんすることが分かっている。

 

 

福祉国家の破たん

 福祉サービスがすべて無料だったソ連は1970年代、国家財政が大赤字になった。医療費などが次々と削減され、サービスが低下。乳児死亡率が上がり、男性の平均寿命も短くなった。

 同じことを福祉大国スウェーデンも経験中だ。

 高齢者への手厚い年金と介護などを約56%の国民負担率(国民の所得全体に対する税金と社会保障の負担の割合)でまかなっている。

 ただ、スウェーデンでは80年代末以降、経済的に停滞して財政難となり、「高福祉モデルは成り立たない」という認識が広がった。92年からの福祉改革で経費・人員削減が進み、介護施設に入れない高齢者がたくさん出たり、医師の診察が受けられないことは当たり前になった。

 スウェーデンの前首相は「75歳まで働き続ける可能性に備えてほしい」と呼びかけ、現財務相も「国庫は完全に空です」と危機感を訴えている。

 各銀行は、リタイア後に備えた積立預金を呼びかけているが、多くの国民は収入の6割を所得税で持っていかれるので、簡単には貯金ができない状態だ。

 オーストリア出身の経済学者ハイエクは著書『隷従への道』でスウェーデンに触れ、「なんらかの不愉快な結果がやってくるだろう」と述べた。まさにそれがやってきている。

 

富の「分散」から「集中」へ

 日本にも「不愉快な結果」はやってきている。

 2013年度時点の社会保障費は約111兆円。社会保険料でまかなえず、約43兆円を税金で補った。政府の借金も約43兆円。借金で社会保障を無理やり成り立たせているというわけだ。

 日本のいびつな福祉大国ぶりは、スウェーデンと比較すればさらに見えてくる。

 国民から集めた税金と保険料のうち、どれぐらいの割合を社会保障に使っているかを計算すると、日本は67%、スウェーデンは64%(2008年時点)。つまり、「日本はスウェーデン以上の福祉大国」だったのだ。

 ただ、日本の場合、どの政党も、「もう成り立たない」とは口が裂けても言わない。日本はどうなってしまうのか。

 幸福の科学の大川隆法総裁は政府のお金の使い方について、こう指摘している。

「資本主義の原理は、基本的には『富の集中』です。それぞれの人がバラバラに十万円ずつ使ってもたいしたことはありませんが、お金を、数億円、数十億円、数百億円と集めたら、大きな仕事ができるようになります」

 社会主義的な「富の分配」は支給したもの以上の経済効果を生まないが、「富の集中」は何倍もの効果を生む。これを実践したのが、今、ブームが起きている田中角栄元首相だ。

 

 

移動時間が3分の1になればGDP3倍

 首相就任直前に発表した『日本列島改造論』で角栄氏は、自身の構想を説明した。

「9千キロメートル以上にわたる全国新幹線鉄道網が実現すれば、日本列島の拠点都市はそれぞれが1時間の圏内にはいり、拠点都市同士が事実上、一体化する」

 角栄氏は日本中を「一都市」にするビジョンを持ち、新潟や富山を「東京都内」にし、島根や高知を「大阪市内」にすると語っていた。また、こんな予測もしていた。

「人間の1日の行動半径の拡大に比例して国民総生産と国民所得は増大する」

 これはある程度、実感できる。新幹線開通前の1956年、東京~大阪間の移動は7時間半かかっていたが、92年には3分の1の2時間半に縮まった。その36年間で日本の1人あたりの実質GDP(国内総生産)は3倍に増えた。つまり、国民の所得が3倍になったのだ。

 角栄氏が当時示したリニアも含めた新幹線構想(次ページ図)は、まだ3割しか実現していない。超低金利で金余りの今、5年から10年ぐらいで全国に一気に開通させる努力をすれば、GDP3倍増を再現できるのではないだろうか。

 例えば、新大阪から松江までは岡山経由で約3時間半かかる。それが「山陰新幹線」ができると約1時間半。移動時間が半分以下になれば、島根や鳥取の人たちの所得が2倍以上になる可能性があることを意味する。

 

 

新幹線が「社会保障」になる

 新幹線による所得増の効果は、昨年開通した北陸新幹線や、2011年に全線開通した博多~鹿児島間の九州新幹線でも実証されている。九州では1世帯あたり年間所得が5万円近くも増えたという。角栄氏の言うように、短時間での移動範囲が広がることで、その地域全体に富が生み出される。

 新幹線の通っていない島根や鳥取、高知、愛媛、大分、宮崎といった県は、高齢者の割合が高い。ここに新幹線が通ることで、仕事が増え、若い世代の人口流出が止まり、高齢者を支えることができる。

 高齢化が進んだ地域は自殺率も高い。実は、「その原因は新幹線の整備・開通の遅れ」という説がある(注)。ならば、新幹線やリニアを全国に張り巡らせることで、高齢者を若い世代が支え、自殺に至るような人たちを救うこともできる。

注)自殺総合対策推進センター(東京都小平市)の本橋豊センター長が指摘。

 

 

社会保障が要らなくなる?

 自民党はリニアや新幹線の整備で、JRなどに30兆円規模の資金を貸し付けるとしている。しかし、過大な「富の配分」を終わらせ、「富の集中」によって各地域で高齢者を支えられるようにするには、今の社会保障費に相当する100兆円規模の投資が必要だろう。

 角栄氏のプランをすべてリニア方式にすれば、大阪と松江・高知・松山がそれぞれ40分程度で結ばれ、みな「大阪市内」になる。この「交通革命」は100兆円を投じる価値がある。

 加えて、航空・防衛・宇宙分野にもさらに100兆円を投資し、日本とアメリカを2時間程度で結ぶスペースプレーンを開発したいものだ。移動時間が5分の1に短縮され、「国内」並みのフライトになる。

 これらの新たな「日本列島改造論」を掲げているのが幸福実現党だ。これを実現できれば、破たん寸前の「福祉大国」から、繁栄を呼ぶ「未来投資国家」へとイノベーションすることができる。

(綾織次郎)

 

 

すでに成り立っていない日本の社会保障

 

・今のまま福祉サービスを続け、消費税の増税でまかなう場合、2060年の時点で68.5%になる(注2)。

・65歳以上の1人あたりの社会保障費は253万円(2010年時点)。現役家庭がリタイアした父母2人に約500万円を「仕送り」している計算(注2)。

・竹中平蔵・元経済財政相は「65歳から全員に年金給付したら消費税30%でもダメ」と語り、ネットで猛反発にあったが、客観的な事実。

・70歳以上の高齢者の医療費は、自己負担6割でも成り立たない(注1)。

・現在の福祉など公的サービスは、平均世帯所得が890万~920万円ないと維持できない(注1)。

(注1)東京大学、慶応大学で設立された「政策シンクネット」で、高齢社会対策プロジェクト「首都圏2030」に参加する投資家・ブロガーの山本一郎氏の指摘。
(注2)原田泰・元早大経済学部教授の試算。

 

 

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