インドネシアの海洋警察は4月、同国の海域で違法操業していた2隻のマレーシア漁船を爆破した。

インドネシアの有力な女性政治家である、スシ・プジアストゥティ海洋水産相が注目を浴びている。

マレーシアやベトナムなど船籍に関係なく、インドネシアの領海内で違法操業する外国漁船をだ捕し、見せしめのために爆破するという、強硬手段に出ているからだ。

外国メディアでもたびたび紹介され、ネット上では「スシ姉さん」の愛称で親しまれている。最近では、5月6日付産経ニュースが伝えた。

同ニュースなどによると、スシ氏は、2014年に発足したジョコ・ウィドド政権に入閣。就任時、違法漁船の乱獲問題に触れ、「水産資源を盗む外国漁船は撃沈する」と宣言した。その宣言通り、大臣就任以来、海上で爆破処置した外国漁船は150隻を超えるという。

中国に対しても、皮肉を交えて強気

女傑ぶりを示すエピソードには事欠かない。

たとえば、今年3月に、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)内で、違法操業していた中国漁船を、インドネシア当局の船が捕まえ、港まで連れて行く最中に、武装した中国の監視船に体当たりされて、中国漁船を奪われるという事件があった。

これに対し、スシ氏は4月の会見で、「中国は大国で自国では強力に独自の法律を執行している。こちらにも同様の措置をとらせてくれるでしょう」と語った。つまり、中国側に中国漁船の返還を求め、爆破する方針を示したわけだ。

漁船爆破を前に、ティーカップを片手に微笑む

英エコノミスト誌も4月に、インドネシア最高裁に中国漁船の爆破の許可を求めるなどしている、スシ氏について記事を掲載。これから爆破する違法漁船を背景に、船の上で、ティーカップを片手に、サングラス姿で微笑むスシ氏の姿を掲載した。

密漁によってインドネシアが受けている漁業被害が、年間200億ドル(約2兆2000億円)にのぼることを考えれば、単なるパフォーマンスとは言えないかもしれない。

ただ、インドネシアの国内事情で、海洋警察がせっかく捕まえた中国船も、司法判断で中国側に返却するケースもあり、こうした状況に対して、スシ氏は憤慨しているという。

日本の政府は、国民を守れるのか

ちなみに、日本でも2010年、尖閣諸島の海域で違法操業していた中国漁船が、日本の巡視船に体当たりした際、中国人船長を捕まえた。しかし、中国に弱腰だった当時の民主党(現:民進党)政権は、簡単に中国人船長を釈放してしまった。その後も、中国は、日本周辺で領海・領空侵犯を繰り返している。

もし、日本政府が、スシ氏のような対応を行えば、おそらく、マスコミや国民の多くが、政府たたきを始めるだろう。だが、国際社会では、国民の生命・財産・安全などを守るために、こうしたことが行われている事実を知っておく必要がある。(大)

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