米国防総省は29日、米海軍の原子力空母「ジョン・C・ステニス」を中心とする艦隊の香港への寄港の要請を、中国政府が拒否したことを明らかにした。寄港拒否の理由は不明だが、米軍が中国による南シナ海の軍事拠点化をけん制するために、「航行の自由」作戦で監視活動を強めていることに反発した可能性がある。

中国に軍事を握られている香港

香港が1997年にイギリスから中国に返還された時、中国は香港に「1国2制度」を約束した。香港と中国は1つの国であるが、最低50年間は、香港に軍事と外交以外の高度な自治権を認めるという仕組みだ。

香港への米軍の寄港を中国が反対できるのは、香港の軍事は中国が握っているからだ。軍事を中国に握られているということは、香港で民主化デモなどが激化した時に、中国が軍を派遣して鎮圧する恐れもあることを意味する。

今回、香港への寄港を中国に拒否されたアメリカは、「香港の民主の発展および『一国二制度』の枠組みでの高度の自治を長く支持する」立場をとっている。これに対し、中国側は、「香港の政治制度の発展は中国の内政であり、いかなる外国勢力も干渉してはならない」としている。

ますます高まる「香港人意識」

中国は、香港は中国の一部だと強調するが、香港で近年行われたアイデンティティー調査では、香港人が「中国人」に対して感じる帰属感が過去最低を記録。特に、80年代生まれの香港の若者の帰属感はわずか2.4%しかなかった。

香港人は中国本土に本来の意味の民主や自由、人権がないことを認識しているため、中国と一体化することに大きな不安を感じている。今後、「香港の中国化」に反対するさまざまな活動が盛り上がってくることが予想される。

保護者不在の香港には国際世論によるウォッチが必要

中国に批判的な香港の書店の店員が行方不明になるなど、香港人のあらゆる自由や人権が失われつつある。こうした事態を防ぐためには、世界の監視の目が必要だ。

幸い、国際都市である香港には、海外メディアの支社が集まっている。2014年に起きた「本物の普通選挙」を求める抗議デモ「雨傘革命」の時、天安門事件のように中国軍に鎮圧されなかったのは、世界中のメディアが連日デモの様子を報道していたことが大きい。

「香港の中国化」ではなく、「中国の香港化(民主化)」を実現するために、香港への世界の監視の目を強化することが必要だ。(真)

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