琉球王国の首里城。

国連の人種差別撤廃委員会などが過去4度にわたり、沖縄県民を「先住民」として認定したことについて、木原誠二・外務副大臣は、27日に開かれた衆院内閣委員会で、「事実上の撤回、修正をするよう働きかけたい」と述べ、政府として対応する意向を示した。

この発言について、地元沖縄の2大紙の反応は分かれた。

沖縄タイムス(28日付電子版)は、事実を淡々と報じるのみだった。

「自己決定権」をもとに基地反対を唱える

しかし、琉球新報(同)は、「琉球巡る歴史認識に隔たり」という見出しで記事を掲載。この中で、島袋純・琉球大学教授の話として、「本土と同じ血筋や言語だから先住民族ではないとし、撤回を求めるとする国会のやりとりは的外れで、議論のすり替えだ」と批判的に伝えた。

島袋教授は、「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」の国連部会長を務め、米軍の普天間基地移設に反対する人物。同氏は、県民が土地や海、資源に関して、独自に判断できる「自己決定権」があると主張しており、その背景には、沖縄がかつて琉球王国だった点を挙げているという(琉球朝日放送の2015年9月17日放送)。

「自己決定権」は、先住民が、政治や経済、社会などのあり方を決められる権利。同氏は、これをもとに基地反対論を唱えている。

県知事が「国王」になれる!?

今回の認定に働きかけてきたのは、「反差別国際運動日本委員会」という左翼団体。同団体は、2012年に人種差別撤廃委員会に提出した要請書で、「日本政府が琉球・沖縄人を先住民族として正式に認識して、ILO169号を批准し、履行することを要求する」と求めている。

ILO169号は、日本が批准していない条約(現在:22カ国批准)だが、法的拘束力を有するものだ。この条項には、「関係人民が伝統的に占有する土地の所有権及び占有権を認める」「関係人民の土地に属する天然資源に関する関係人民の権利は、特別に保護される」などと定められている。

仮に、日本がこの条約に加盟すれば、県知事が、首相と対等な関係を要求できる根拠になりかねず、米軍の基地移設工事も極めて難しくなる。また、尖閣諸島の付近にある資源の開発についても、県知事のお伺いを立てなければならない。つまり、知事はまさに「琉球王国」のような振る舞いができるようになるのだ。

これまで日本政府が、国連に十分な反論をせず、「先住民族」の認定を阻止できなかった責任は重い。それは、慰安婦問題で対日追及に傾く人種差別撤廃委員会や、中国の「南京大虐殺」資料を登録したユネスコへの対応も同様だ。

「琉球独立論」は、結局、歴史認識をめぐる戦いでもある。政府に強い反論を求めたい。

(山本慧)

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