台湾最大規模を誇る台北市の士林夜市(ナイトマーケット)。連日連夜、夕食や買い物をする人で大賑わい。人気店の前には、長蛇の列ができる。

2016年6月号記事

台湾ルポ

国防女子が行く!

日本と台湾は運命共同体だった

おいしい食べ物、穏やかな気候、優しい人、そして親日。台湾は、日本人に人気の観光地です。でも、今、中国が経済的、軍事的に台湾をのみ込もうとしています。4月、台湾留学から5年ぶりに台湾を訪れ、さまざまな人に話を聞き、日本と台湾の国防について考えました。

(編集部 小林真由美)

台湾は毎晩が"お祭り"です。夜市には、小さな肉まんの生煎包やカキ入りオムレツの?仔煎など、さまざまなB級グルメの屋台が立ち並び、歩いているだけでもわくわくします。

でも、夜市にいた台湾人男性は、「最近、中国人観光客が増えたのはいいけど、マナーが悪くて困る」とつぶやいていました。

日本と同じだ、と思いながら台湾のお土産として人気のパイナップルケーキの店に入ると、大声の北京なまりの中国語が飛び交っていました。

多くの中国人観光客が、我先にとレジに押し寄せ、大量に商品を積み上げ、早口で値引き交渉を始めました。爆買いです。

とまどう店員に、眉をひそめる地元客。本心では嫌でも、経済的に中国に頼らざるを得ない、そんな「台湾の今」を見た気がしました。

筆者が5年前に留学していた国立政治大学の大学院生で、ひまわり学生運動(注)に参加した学生政治団体のリーダーにも話を聞きました。デモには約50万人が参加したらしいのですが、なぜそれほど多くの市民が立ち上がったのでしょうか。

「国民党の馬英九政権で、台湾の大企業は中国に工場をどんどん移転した。台湾には中国人が押し寄せ、仕事を奪っていく。このままでは台湾が中国にのみ込まれてしまう。この危機感が人々を駆り立てた」

彼は卒業後、すぐに徴兵で軍隊に行きます。中国の軍事的な脅威についても聞いてみました。

「徴兵なんて、時間の無駄!

国防は政府が何とかするべき」

政治団体のリーダーの学生でも、国防については意外と無関心。そこも日本と似ています。

台湾と日本の未来について、台湾の民主化と日台交流に尽くしてきた元駐日代表の羅福全氏に話を聞きました(次ページ)。

(注)2014年3月、中台間のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」を結ぼうとした馬英九政権に対して危機感を抱いた学生を中心とする市民が立法院(国会)を占拠して抗議した運動。

次ページからのポイント

「日本人には台湾との関係を大切にしてもらいたい」羅福全氏

「台湾人が求めている「台湾」の建国」李明峻氏

「日本は台湾を「国」として認めるべき」川村純彦氏