浦氏の右のロボットは「BOSS-A」。2016年、水深1500メートルの海底で海底資源のコバルトリッチクラストの厚さを世界で初めて全自動で観測。BOSS-Aを使えば、コバルトリッチクラストの資源量の調査が「簡単に」できるという。

2016年6月号記事

海中ロボット研究者

浦 環

(うら・たまき)九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授。日本の自律型海中ロボットの研究をけん引する。

未来産業のたまご

第4回

人がやらないことをやる──
「海中ロボット共和国」の夢

海中はまだ謎が多く、人類の知らない世界が広がるフロンティアだ。ロボットによる海中探査の第一人者である浦環氏に話を聞いた。

「海底に『ロボット共和国』をつくるのが昔からの夢でした」

こう語るのは、海中ロボットの研究者である浦環教授だ。子供のころ、マンガ『鉄腕アトム』を読んだ時に抱いた夢。それは──。

海の底でロボットたちが忙しく働き、鉱物資源を含んだ岩を見つけて掘り出す。それを海底の工場で精錬し、バルーンで海面に上げる。人間が海底に潜ることなく、資源を船で日本へと運んでいく……。

海底には、地上に量が少ないコバルトなどのレアメタル(希少金属)が眠っている。レアメタルは現在、ステンレス鋼や半導体レーザー、電池などに使われている。電子機器の性能向上はレアメタルにかかっているため、次世代の電気自動車や航空機、宇宙開発にも欠かせない"お宝"だ。

それをロボットが海底から自動的に運ぶようになれば、資源の乏しい日本にとっては、まさに夢のような話だ

「10年くらいで実現の可能性が見えてきます」と浦氏は"豪語"する。