国連の特別報告者を務め、米カリフォルニア大学教授でもあるデービット・ケイ氏(画像は同大学HPより)。

日本での「表現の自由」の実態調査で来日した、国連人権理事会のデービッド・ケイ特別報告者が19日、暫定の調査結果を発表した。テレビ局に政治的公平を求める放送法第4条の廃止や、特定秘密保護法の改正などを提言。ケイ氏は今後、正式な報告書をまとめ、2017年に同理事会に提出する。

この発表でケイ氏は、「政治的に公平であることなど、放送法4条の原則は適正なものだ。しかし、何が公平であるかについて、いかなる政府も判断すべきではないと信じる。(中略)政府は放送法4条を廃止し、メディア規制の業務から手を引くことを勧める」と発言。

特定秘密保護法についても、ケイ氏は、「懸念として、まず、秘密の指定基準にあいまいな部分が残っている。次に、記者と情報源が罰則を受ける恐れがある。記者を処分しないことを明文化すべきで、法改正を提案する」とした。

偏向報道への対策はどうする?

ケイ氏は放送法を問題視したが、昨年、安保法案をめぐって、過剰に反対論を展開したテレビ局の偏向報道を知った上での発言なのか。テレビは、新聞や雑誌とは異なり、公共の電波を使っているため、「公正・中立」な報道を心掛けるよう法的に義務づけられている。

第4条を廃止した場合、テレビ局は、「公正・中立」という看板も下げるべきだろう。公正・中立を装って特定の意見を発すれば、偏向報道の問題を解決することは難しい。

「特定秘密」の必要性は認めている

特定秘密保護法を廃案すべきと論じる中日新聞は、今回の発言を「特定秘密法で報道萎縮」という見出し記事で報じているが、あくまでもケイ氏は、法律の必要性自体は認めていることに注目すべきだ。

世界の多くの国々は、同法に相当する「スパイ防止法」を制定して、国家の秘密を保持している。それがひいては、外敵から国民の生命を守ることにつながるためだ。「安保法の違憲発言」で有名になった東京大学教授の長谷部恭男氏でさえ、特定秘密保護法の制定を肯定している。

国連の調査は信頼できるか?

国連の報告者と言えば、昨年10月、「子どもの売買、児童売春、児童ポルノ」に関する特別報告者、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏が、「日本の女子生徒のおよそ13%が援助交際に関わっている」と発言して物議を醸した。これにより、報告者はどのような情報をもとに調査しているのかという点で、信ぴょう性に大きな疑義が生じた。

ケイ氏もまた、「情報提供者の多くが匿名であった」ことを打ち明けており、調査の客観性や、情報源の信頼性への疑問はぬぐえない。そうした情報をもとに、日本に批判的な調査結果を出すのなら、日本としては到底受け入れられるものではない。

調査してもらうことは結構だが、国連は透明性のある組織に変わるべきだ。

(山本慧)

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