中国のWebサイトに、習近平・国家主席の辞任を求める匿名の手紙が掲載されたことで、サイト関係者や著名コラムニストなど20人が行方不明になっている。中国の治安当局に連行された可能性が高いという。

問題となった手紙は、3月4日、政府系のニュースサイト「無界新聞」に掲載された。内容は、「親愛なる習近平同志、我々は忠実な共産党員だ」と始まり、経済低迷、言論弾圧、個人崇拝の推進などの問題点を挙げ、「(習氏は)中国を未来に導く能力がない」と指摘したもの。

当然のごとく、ただちに削除された。

さらに、この手紙との関連を疑われたアメリカ在住の著名な中国反政府活動家ウェン・ユンチャオ氏の、広東省に住む家族3人も拘束された。ウェン氏は、この書簡については何も知らないと話しているという。

国家元首や政治家に対する批判が、新聞やテレビ、ネットに流れることは、民主主義社会では日常茶飯事だ。しかし、中国では前例がなく、当局は厳しい対応で臨んでいる。

中国では言論弾圧の事実も報じられない

習氏は2月、国営テレビや新聞のオフィスを視察し、記者としての仕事は何よりも共産党に従うことだと発言した。

中国の不動産王で、共産党員の任志強氏は、この発言について、ネット上で批判的な書き込みをした。中国当局はこれに対し、厳重に処分する方針を示している。

その他にも、中国当局は、習氏に批判的な書き込みをした短文投稿サイト「微博」のアカウント閉鎖を命じるなど言論統制を強めている。ちなみに、こうしたニュースは、中国国内では一切報道されない。

G7に中国は入っていない。身勝手な振る舞いに歯止めを

中国の国内外での横暴な振る舞いについて、近年、先進国は見て見ぬふりを続けてきた。だが、多くの人々が政府の弾圧に苦しめられているのならば、国内問題であっても、他国は厳しく指摘すべきだろう。

5月末に開催されるG7伊勢志摩サミットのメンバーに、中国は入っていない。中国の人権侵害について議論するのにうってつけの場だ。

安倍晋三首相は、4月に広島市で開くG7外相会合で、南シナ海問題での結束を確認し、サミットの首脳宣言で「法の支配」の重要性を明確に打ち出すとみられる。

そうであるならば、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的な価値観を共有する先進国のリーダーが一致団結して、中国国内の人権問題も議論すべきだろう。

経済的、軍事的な影響力を増す中国を前に、これまで先進国は有効な手を打って来なかった。もう残された時間は多くない。国際社会、特に先進国は、中国な身勝手な振る舞いに歯止めをかける必要がある。

そして、こうした議論を、議長国である日本政府がリードすることを期待したい。

(小林真由美)

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