高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉に、3000億円以上かかるということが、原子力研究開発機構によって試算されていたと、このほど、多数のメディアが報じた。

これは日本原子力研究開発機構が、福島第一原発事故を受け、2012年、内部的に試算したもの。馳文部科学相が閣議後の記者会見で明らかにした。

もんじゅは、機器の点検漏れなど安全管理上の問題が相次ぎ、原子力規制委員会が原子力機構以外に運営を交代するよう、文部科学省に勧告していた。今年夏ごろまでに新たな運営組織を示せない場合、もんじゅの運営自体を抜本的に見直すことも求めた。これを受け文科省は有識者会議で議論を進めている。

この廃炉費用3000億円は通常の原発の数倍にあたる。また、試算は廃炉に約30年かかると仮定している。もんじゅはこれまで1兆円を超える費用が投入され、維持費は年間200億円程度とされている。

そもそも「もんじゅ」は何のためにある?

安全性や運営の問題は解決されるべきだ。しかし、費用だけではなく、国がなぜもんじゅの開発を進めてきたかについて、もう一度考えるべきだろう。

日本はエネルギーの約96%を他国からの輸入に頼っている。二度のオイルショックの経験もあり、長期的なエネルギーの安定供給は日本にとって常に考えなくてはならないテーマだ。原子力発電なら、石油や石炭に比べ、非常に少ないウランを輸入するだけで発電することができる。

だが、発電に使用できるのはウランのうち0.7%しかなく、核廃棄物が発生する。これを有効に活用するために高速増殖炉もんじゅの実験が行われているのだ。

エネルギー自給率アップで日本の国力は増す

もんじゅの運営が成功すれば、発電しながら、同時に消費した以上の燃料を手に入れることができるようになる。つまり、エネルギー資源の輸入に頼らずに、国内で安定したエネルギーを得られるということだ。日本が先の大戦に突入したのは、エネルギーの輸入を止められたからだった。自国で使うエネルギーを自分たちで確保できるかどうかは、国民の生存にかかわる大問題だ。

また廃炉費用や維持費用がかかると見るより、それがどれだけ多くの利益を生み出す可能性があるかを考えるべきだろう。輸入に頼らない安い電力で企業活動が活性化し、家計が楽になることで、日本経済を回復させ、維持費以上の利益回収を実現することも可能なはずだ。

エネルギーは国家の血液とも言われる。もんじゅが目指している日本の安定的な繁栄を見落としたまま、運営や費用の話題のみで議論をすすめてはならない。

(HS政経塾 表奈就子)

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