中国の「南京大虐殺文書」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録された問題をめぐり、中国がユネスコに提出した申請資料が、登録資料の一覧と、その資料を保管する7カ所の公文書館名を記しただけの目録であったことが分かった。産経新聞(10日付)が報じた。

記事によると、目録に記された登録資料は十数点で、「大虐殺」を証言した中国人の程瑞芳の日記などが含まれていた。日本の多くの学者がこの日記の信ぴょう性を否定しているが、中国側は「虐殺の証拠」と主張。このほか、最初の審査を担う登録小委員会の1人の専門家のみが、南京文書の審査を担い、この決定に基づいて、最終審議が行われた事実も判明した。日本政府は引き続き、ユネスコに対して制度改革を求めていく方針だという。

「南京」審議のずさんさ

本誌・本欄で繰り返し報じてきたように、中国の申請はずさんな内容だった。今回、明らかになった問題以外にも、「南京」の審議では重大な事実が発覚している。

昨年12月、中国の申請資料に反論してきた、歴史問題に精通する藤岡信勝・拓殖大学客員教授と、釈量子・幸福実現党党首の2氏が、東京都内で記者会見を開催。ユネスコ中枢の関係者を通じて判明した「南京」審議に関する2つの問題を発表した。

1つ目の問題は、ユネスコが、最終審議の場で中国の原資料、あるいは、そのすべてのコピーを持っていないのに、審議を行っていた事実。2つ目は、「南京」登録を決定づけたのが、「南京大虐殺」を認める日本政府の見解であったという点だ(下記関連記事参照)。

つまり、ユネスコは、「南京」資料のすべてを把握せずに、世界記憶遺産への登録を決定。一方で、これに反論すべき日本政府が、自らの公式見解によって登録を後押してしまったわけだ。

日本政府がユネスコ改革を求める動きは歓迎すべきだが、それだけでは、「南京大虐殺文書」を記憶遺産から取り消すのは困難であることが、すでに明らかになっている。政府自らが「大虐殺はなかった」という見解を発表しない限り、今後も、中国のプロパガンダに対抗することはできない。

2015年は歴史戦で大敗した年

振り返って見れば、今回の「南京」問題に加えて、戦後70年であった昨年は、「河野・村山談話」を踏襲して、自虐史観を払拭できなかった「安倍談話」や、「慰安婦が性奴隷であった」という誤った見方が海外に広まった日韓合意など、歴史問題で大きく後退した年だった。

安倍政権は当初、自虐史観を払拭するという保守層からの期待を集めていたが、その期待をことごとく裏切っている。本当に、日本の誇りを取り戻す政党はどこか。今夏の参院選では、安倍政権への審判を下すべきだろう。

(山本慧)

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