福井県にある関西電力高浜原発3、4号機の再稼動差し止めを命じた仮処分に対し、関西電力が異議を申し立てていたことについて、福井地裁が関西電力の異議を認めた。

これによって高浜原発の再稼動が可能となる。

今回問題となった高浜原発2基は、今年2月に新規制基準に基づく検査に合格し、いつでも再稼働ができる状態だった。ところが今年4月、福井地裁の樋口英明裁判長(当時)は、万が一にも深刻な事態が起こらないとは限らないという、およそ科学的とはいえない理由で新規制基準を「合理性を欠く」と判断。脱原発を主張する人々の申し立てを受け入れ、再稼働を禁じる仮処分を出した。

仮処分とは何か

関西電力の異議を認めた今回の判断は、きわめてまっとうなものであり、そもそも4月の仮処分自体が異常だった。

仮処分とは、民事訴訟などで裁判結果が出るまで待っていたのでは権利が実現できなかったり、著しい不利益が出たりする場合、一時的になされる処置である。

たとえば、不当な理由でクビにされた従業員が訴訟を起こす場合、クビにされて給料が入ってこない状態で判決を待つのは従業員の不利益が大きい。そのため、裁判の結果が出るまで、従業員の地位と給与の支払いを求めるケースがある。

他にも、個人の名誉を著しく傷つける出版物が発刊されたことをめぐって裁判が行われる場合、裁判の結果が出るころにはその出版物は出回ってしまっている。それでは遅いため、出版が差し止められるなどのケースもある。

このような「仮処分」は、裁判で結論が出る前に実施されるため、慎重になされるのが普通だ。

特に、出版差し止めなどは、問題がなかった場合は言論・出版の自由を侵害することにもなりかねない。

差し止めは国民全体を巻き込む

その点、高浜原発の差し止め仮処分は問題が多かった。

再稼働ができないことによって直接的な損害を受けるのは関西電力だが、それだけではない。

まずは、原発関連の雇用や原発関係者による消費活動が失われることによる地域経済への打撃がある。

さらには、原発が稼働しないことで電気代が高騰すれば、国民経済に大きなダメージがある。特に電力を大量に消費する工場は電気代の高騰が業績悪化や倒産にもつながる。

それでも現時点では原発ゼロでも不便を感じないという声もあるだろうが、老朽化した火力発電を無理に動かしているからであり、事故の危険性は少なくない。

はっきり言えば、差し止めを求めた原発反対派は、その地域の住民全体や国民全体の利益を代表しているわけではない。彼らの訴訟に巻き込まれる大勢の国民の不利益を考慮に入れない仮処分決定は、大いに問題がある。

しかも、高浜原発は法律で定められた新基準を満たした上、必ずしも再稼動の要件ではない地元町長の再稼働同意も得ており、差し止めが正当化される点は見当たらない。

差し止め仮処分が取り消された今、高浜原発は速やかに再稼働させてもらいたい。

(小川佳世子)

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