世界中で人工知能(AI)の研究が活発化する中、AIの非営利研究組織「OpenAI」がこのほど設立された。

主な設立目的は、AIが特定の企業に独占され、技術が悪用されることを防ぐことや、世界中の人々がAIの恩恵を受けられるようにすること。同組織は、AIの研究成果やプログラムに用いたコードなどを共有することなどを推奨している。

OpenAIに出資したのは米テスラモーターズのCEOであるイーロン・マスク氏、SNS大手のLinkedInの共同創業者のリード・ギャレット・ホフマン氏など。シリコンバレーのIT起業家や投資家らが、研究費として計10億ドルを投資している。

こうした研究機関ができ、AIの研究が進み、人間の暮らしが豊かになることは喜ばしいことだ。

AIの研究が進むにつれて、人間の単純作業がAIに取って代わられれば、働き方そのものが変わっていく。人間が行うべき仕事は、よりクリエイティブなものになっていくだろう。

ホーキング博士「AIは核兵器より危険」

一方で、AIの研究で危惧されているものの一つに、「2045年問題」がある。これは、現状のペースでコンピューターの性能が向上していけば、2045年には人間より賢いAIが誕生し、AIが人類を滅亡の危機に陥れる、というもの。ターミネーターで描かれているような、人類対AIの戦いが現実化するかもしれない。AIの研究には期待と不安が混在している。

OpenAIの出資者の一人であるマスク氏は、「AIは国家を超えて、世界レベルで議論されるもの」「AIは潜在的に核兵器より危険」と、注意を促している。スティーブン・ホーキング博士は、「完璧なAIの開発は、人類の終焉を意味するかもしれない」と指摘する。

人間側の善悪の価値判断の整理が必要

AIの研究には未知数の部分は多いが、機械化・自動化の流れ自体は避けられない。ただ、AIの技術を進歩させると同時に、人類は一定の価値観を共有する必要がある。それは、「善悪の価値基準」だろう。

たとえば、現在、「イスラム国」をめぐって、イスラム教的な価値観とキリスト教的な価値観の対立が続いている。もちろん、イスラム国の残虐な殺戮行為は決して正当化できない。しかし、欧米諸国は、人種差別や植民地支配でアジア・アフリカ諸国民を苦しめた歴史を持つ。イスラム国を悪魔と見なし、せん滅しようとする欧米側の「正義」にも偏りがある。

今後、技術が進歩し、AI自身が、「何が善で何が悪か」を判断する局面も現れてくるだろう。であるならば、AIをつくる側の人間が、「何が善で、何が悪か」を判断できなければならない。

そしてまた、その判断は、多くの人々の幸福を生み出すものでなければならず、特定の人々や集団を排除・殲滅するようなものであってはならないはずだ。もし、現在の中国共産党政府がAIをつくったことを想像してみれば分かりやすいかもしれない。政府に意見する、チベットやウイグルの人々を「悪」とする価値観は間違っている。

つまり、人間の側が、普遍的な正義とは何か、特定の地域性や時代性を超えた正義とは何か、ということに思いを馳せることが、AIの進歩を加速させる前提となる。(冨野勝寛)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『正義の法』特設サイト

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