イスラエルは内部から崩壊してしまうかもしれない……。そう思わずにはいられない映画だ。

11月28日、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

11月28日公開の「ハッピーエンドの選び方」は、イスラエルのエルサレムの老人ホームが舞台。発明好きのヨヘスケルはユニークなアイデアで生活を少しだけ楽にするような機械を作るのが趣味だ。

ある日、ヨヘスケルは、望まぬ延命治療に苦しむ親友マックスから、発明で安らかに死なせてほしいと頼まれる。ヨヘスケルは親友の望みをかなえるため、苦しまずに最期を迎える装置を発明。同じホームの仲間と協力して、怪しまれないように準備を整え、ついにマックスを旅立たせる。

ところが、秘密だったはずの発明の評判は瞬く間にイスラエル中に広がり、依頼が殺到。そんな中、ヨヘスケルの妻に認知症の兆候が現われ始め――。

イスラエルが建国されたのはユダヤ教に理由がある

世界的に社会問題にもなっている安楽死に加え、同性愛も描かれた作品で、コミカルでありながらこの2つの重いテーマについて考えさせられる。ただ、これらのテーマは、イスラエルという国の存続を脅かしかねない問題を含んでいる。

というのは、イスラエルという国が中東のあの場所にある理由は、ユダヤ教の聖典である『旧約聖書』だからだ。ここには、ユダヤの民が、「カナン」の地を神から与えられたことなどが書かれている。しかし、ユダヤ人の国がここにずっとあったわけではなく、イエス・キリストを処刑したことで迫害され、この地を追われて世界中に散り散りになった。ナチス・ドイツにも迫害され、数百万人が殺害されるという悲劇も起こっている。

イスラエルが建国されたのは、第二次大戦後の1948年。神から与えられた地に戻ろうという運動が起き、ユダヤ人の国をつくった。

ユダヤの民は神の言葉を否定するのか?

このユダヤ教の神は、自殺も同性愛も禁じている。

それゆえ、イスラエルでは、自殺した人は、そうではない人と分けて埋葬されたり、自殺した人の兄弟の結婚にも悪影響が及ぶことがある。同性愛についても、今年7月にエルサレムで行われたLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の祭典「ゲイ・プライド・パレード」では、ユダヤ教超正統派の男が参加者6人を刃物で刺す事件が起きたほどだ。

もし、自殺や同性愛を肯定してしまえば、ユダヤの神の言葉を否定することになり、それは、イスラエルが現在の場所にある理由をも否定してしまうことにつながる。

霊的人生観をベースにしなければ答えは出ない

もちろん、無理のある延命治療を止めることは自殺とは分けて考えるべきだ。おそらく映画の製作者は、単に自殺をタブー視して蓋をしてしまっている状況や、自分の性に違和感を持つ人が存在する問題について、問題提起をしようとしているだけかもしれない。ただ、ユダヤ教にそうした問題を解決できる答えが見あたらないのだろう。

自殺も同性愛も、「人はなぜ生きるのか」「死んだらどうなるか」「なぜ肉体と心が合わないのか」などの疑問に答える霊的人生観をベースにしなければ、どう判断すべきか、答えは出ない。イスラエルでも新しい宗教が求められているのではないか。(大塚紘子)

  • 監督・脚本/シャロン・マイモン、タル・グラニット

  • 出演/ゼーブ・リバッシュ、レバーナ・フィンケルシュタインほか

  • 配給/アスミック・エース 11月28日、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

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