マレーシアで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の議長声明が23日、発表された。南シナ海問題では、中国の人工島建設を念頭に「軍事化」の動きに言及。「複数の首脳が示した懸念を共有した」と明記されている。

ASEANが議長声明で南シナ海の「軍事化」に言及するのは初めて。中国への名指しを避けつつも、「軍事化」に触れることで中国を牽制する狙いがあるとみられる。

中国傘下の米企業経営者が台湾のテレビ局を買収

一方、中国の覇権が及びつつある台湾では、中国資本が台湾メディアに介入し、報道と言論の自由が危ぶまれている。

台湾の有力有線テレビ局「東森テレビ」を、中国の映画会社DMG傘下の米企業経営者が買収し、経営権を取得する案が、ASEAN議長声明が発表された日に浮上した。産経新聞が報じた。

台湾の法令では、テレビ局への中国人の投資を禁じており、外国人の投資にも制限がある。そのため、米国のDMGエンターテインメントの最高経営責任者が米国の投資ファンドから6億ドル(約740億円)を出資し、東森テレビの株式の約6割を購入した。

DMG会長の肖文閣氏の父親は人民解放軍の元将軍であるため、台湾社会の反中感情を刺激し、メディアや野党が反発している。

中国の国有企業がマレーシアの火力発電関連会社の全株式を買収

中国は、政治的に対立する国との経済協力で発言力を強めるとともに、国の命運を左右するエネルギー産業も押さえようとしている。

中国の国有企業で原子力大手の中国広核集団(CGN)は、経営が悪化しているマレーシアの国営投資会社1MDBの火力発電関連会社の全株式を約98億リンギ(約2800億円)で買収した。日本経済新聞が報じた。

1MDBはナジブ首相に対して巨額の資金を送った疑惑が浮上し、ナジブ首相はその責任を追及されている。中国は国有企業を通じてナジブ首相を支援し、南シナ海問題についての対中批判をかわす狙いがあるとの見方もある。

日本は経済連携も強化し中国包囲網を固めるべき

ASEAN首脳会議では、中国の軍事化に対する各国の懸念が一致したが、中国は水面下で台湾やマレーシアなどに圧力をかけられる材料を着々と揃えつつある。

東南アジア諸国は、中国の脅威を感じつつも経済的には頼らざるを得ない状況だ。南シナ海の安全を守るためには、日本は軍事面での協力に加え、経済的な連携を深め、チャイナ・マネーにものを言わせて、中国が付け入る隙を与えないようにする必要があるのではないか。(真)

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