豪シンクタンク「Institute for Economics and Peace」がこのほど、2015年の「Global Terrorism Index (世界テロ指数)」を公開した。この報告書によると、2014年に、テロの被害で世界が被った損害額は約529億ドル(約6.35兆円)にも上るという。日本の国防費を約2兆円も上回る数字だ。

さらに驚くべきことに、殺人などの凶悪犯罪による全世界的な被害額は1.7兆ドル(約200兆円)だという。これは日本の国家予算を超える額だ。

シリア内戦で跳ね上がったテロの件数

ここ数年のテロ被害額を見てみると、次のようになる。

  • 2011年――123億ドル
  • 2012年――170億ドル
  • 2013年――329億ドル
  • 2014年――529億ドル

シリアやイラクの内戦が始まった2011年から、被害額が急速に高騰している。実際、同報告書によると、2014年にテロによって生じた死者の51%が「イスラム国」と「ボコ・ハラム」(「イスラム国」に忠誠を誓ったナイジェリアの武装集団)によるものだという。

報告書は、数字を提示するだけでなく、「『イスラム国』に対抗するには、アサド政権の未来に関する国際的な合意が必要だ。『イスラム国』に対する解決策も、スンニ派の利害を考慮したものでなくてはならない。さもなくば、戦いは何十年も続くだろう」と、状況の改善に何が必要であるかを示している。

「イスラム国」はスンニ派を排斥したことによって生まれた組織であるため、彼らの立場を考慮しない合意には、戦いを止める効力はないだろう。

経済成長を停滞させるテロや犯罪

こうして見ると、テロや一般犯罪が如何に多くの損害を生み出しているかが分かる。テロや犯罪は人的・物的被害をもたらすだけでなく、投資やインフラ整備を停滞させる。

経済は、戦争のような「奪い合い」ではなく、双方が利益を得る「Win-Win」という状況下で始めて発展する。「経済成長」というと、「何か新しいモノを創る」と考えるのが普通だが、犯罪やテロを防止するだけでも、大きな経済効果が見られることがあるのだ。

「富」を増やすと同時に、「富の破壊を止める」ことにも注力する必要があるのかもしれない。(中)

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