G20サミットがこのほど、トルコ南部の都市アンタルヤで開催された。サミットの主題は、フランス・パリで起きたテロと、シリア内戦への対応だ。

欧米がロシアに歩み寄る

サミットで、プーチン露大統領が、オバマ米大統領、キャメロン英首相、そしてメルケル独首相らと一対一で話し合っている場面を、欧米各紙が報じている。

英デイリー・メールなどは、パリのテロを受けて「イスラム国」掃討に焦った欧米の指導者たちが、「プーチン氏に擦り寄っている」と報じている。

プーチンは、「イスラム国」掃討のために、「アメリカ、ヨーロッパ諸国、サウジアラビア、そしてイランの協力が必要だ」と発言。これに対し、欧米の指導者たちも、プーチン氏と妥協する方向に動き始めているようだ。

「イスラム国」への空爆を開始しているロシアと協力することを、選択肢に入れているのかもしれない。

欠けている信頼関係

しかし、欧米とロシアの間には溝も残っている。

欧米は、ロシアがアサド政権を存続させるために、欧米が支援している反アサド勢力までも爆撃していると主張。

これに対してプーチンは、「欧米は、我々に対して『どこを爆撃すべきでないか』を教えてくれない。教えたら、我々がそこを攻撃すると思っている。我々が彼らを騙すと考えているのだ」と、相互信頼が欠けている点を指摘した。

お互いに「イスラム国を倒したい」と思っているにもかかわらず、不信感が誤解を生んでいるわけだ。

また、ウクライナ情勢に対しても、欧米は「ロシアはウクライナに対する軍事介入を終わらせるべき」との姿勢を崩していない。

世界を変えられるか?

進展もあった。米露は「シリア人による政治的な変革が必要である」とし、アサド政権と反アサド勢力の間で停戦が結ばれた後、国連が交渉を仲立ちすることで合意した。

今回のテロを契機に、欧米とロシアは、「利害」を基に協力し合う姿勢を少しずつ見せ始めている。

中国が軍事拡張主義をとっている今、ロシアを中国寄りにするようなことはしてはならない。欧米とロシアが和解し、中国包囲網を形勢することこそが、今後の世界の安定を保障することになるだろう。(中)

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