幸福実現党総務会長兼出版局長

矢内筆勝

プロフィール

(やない・ひっしょう)朝日新聞を退社後、幸福の科学に入局。主に広報部門を担当した後、月刊「ザ・リバティ」編集部を経て、広報局長、常務理事等を歴任。NPO(非営利組織)「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」会長に就任し、いじめ相談の傍らいじめ問題解決に向けて、全国でシンポジウムを開催。主な著書に、「いじめは犯罪!絶対に許さない」(お茶の水学術事業会)がある。その他、「朝日新聞の偏向報道から子供の未来を守る!会」「中国の脅威から子供の未来を守る会」を設立、会長。 公式サイト http://yanai-hissho.hr-party.jp/

中国の軍事パレードは、これまで中国共産党が現在の中国を建国した10月1日(国慶節)を記念して行うのが通例でしたが、今年、習近平国家主席はあえて、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」に合わせて行いました。

その狙いや背景を探るべく、幸福実現党・国防部会の会長である私・矢内とメンバーの横井基至さんの二人は、9月2日から8日の日程で、パレードが行われた北京市内と南京の「南京大虐殺記念館」、株暴落で揺れる上海を視察してきました。

現地で私たちが見た、中国共産党による「反日」の実情と、「中国の今」の一端を、全5回に分けて報告します。最終回の今回は、あらためて私の今回の視察で得た結論を、まとめたいと思います。

抗日軍事パレードの目的

まず、習近平が今回の軍事パレードを行った目的は、以下の2つに要約できます。

一つが、海外に向けて、中国が世界の大国であることを見せつけ、周辺諸国に強大な軍事力を見せつけ威嚇すること。そのおもな対象国は、中国の南シナ海・東シナ海への海洋進出を阻もうとする米国、そして"主敵"である日本です。

二つ目が、国内的には、共産党による支配の「正当性」を示し、国内を団結させること。そのために「強い中国」を誇示し、国民の愛国心を鼓舞することです。

特に二つ目は、それを裏読みすれば、「そうせざるを得ない状況」が習近平体制の内部で起きているということです。

つまり、「国内的に、共産党による支配の『正当性』を示し、国内を団結させなければ、共産党による一党独裁体制が維持できない状況が、今の中国内部で起きている」ということです。少なくとも習近平がそうした危機感を抱いていることは間違いありません。

つまり、「共産党による支配の『正当性』が揺らいでいる」のです。

中国の一党独裁の「正当性」 第1の柱――経済成長

では、その「正当性の揺らぎ」とは何でしょうか。それは、中国共産党が一党独裁体制を敷き、13億人以上の国民を支配し、特権階級として富と権力を独占する理由を、国民に説明できなくなっているということです。

中国は1949年の建国以来、一度も選挙をしていません。つまり一度も国民による信任を得ていないのです。しかも、政党は事実上の一党独裁であり、民意を政治に反映させる術はありません。約8900万人の共産党員からなる中国共産党が、政府の上に存在し、その中のごく一握りの幹部(中国共産党中央政治局常務委員会の7人)が13億人の上に君臨しています。

そして最近、国家主席である習近平が、個人的な独裁体制を強化しています。

中国が近年、そうした独裁体制を正当化する「柱」としてきたのが、「経済成長」と「反日歴史観」の2つです。

トウ小平による経済の改革開放政策によって、1990年代以降中国は右肩上がりの経済成長を実現し、それによって国民の生活も豊かになりました。そして実質は別にしても、「世界第2位の経済大国」にまで発展しました。

「そうした豊かな国家を実現したのが中国共産党である」――これが第1の「柱」です。

そのために、中国は是が非でも経済成長を実現しなければなりません。2015年3月の全国人民代表大会ではその目標を経済成長率7%前後に引き下げましたが、実際は7%どころかマイナス成長の可能性すらあるのが、今の中国経済の実態でしょう。

中国の一党独裁の「正当性」 第2の柱――反日歴史観

「経済成長」がもはや不可能なら、中国共産党に残された正当性の「柱」、すなわち政権への求心力を高める方法は、「反日」歴史観を強化するしかありません。

実はこれが今回、習近平が「中国人民抗日戦争勝利 及び反ファシズム戦争勝利70周年」の軍事パレードを行った、最大の理由であると見るべきでしょう。

「中国共産党は残虐な侵略者・日本軍と戦い、それを打ち負かして今の中国を建国した。当時の指導者・毛沢東こそが、国家の父であり、現在の指導者たちはその系譜にある。だから国民はそうした偉大なる中国共産党の指導(支配)に従わなければならない――」

しかし、そうした「反日の歴史観」が偽りであることは、近代史を勉強すれば、だれでも簡単に見破ることができます。

日中戦争当時の中国大陸における正式な政府は中華民国であり、日本軍が戦っていたのは総統・蒋介石の率いる国民党軍です。

その時代の中国共産党は、国家どころか地方の農村地帯に勢力を伸ばしていた共産主義者による一武装勢力に過ぎませんでした。しかも、その指導者・毛沢東は、日本軍との戦いを避けてゲリラ戦に徹し、実際の戦闘は国民党軍に任せて「漁夫の利」を狙っていたことは、よく知られた事実です。

しかも日本が先の大戦で降伏した相手は、アメリカを中心とした「連合国」であり、中国共産党ではありません。逆に、中国共産党は、連合国の一員だった中華民国とその後10年もの内戦を繰り広げた「敵対勢力」であったのです。

中国共産党が日本軍と戦い、勝利したというのは、完全なフィクションであり、中国共産党が捏造した「ファンタジー」に過ぎません。

日本人は習近平の「反日」攻勢と対峙する覚悟を

だからこそ中国共産党は、捏造した歴史を(プロパガンダの鉄則である「嘘も100回言えば真実になる」という言葉の通り)、繰り返し繰り返し、あらゆる手段を講じて国民に刷り込み、信じ込ませてきたのです。

そして経済が崩壊に向かう今、いよいよ残った自分たちの支配の正当性は、この「反日」しかなくなってしまったわけです。

ですから、中国共産党による一党独裁体制が続く限り「反日」が終わることはありません。このことを、私たち日本人は心しなければなりません。

しかし、それは同時に、中国経済が衰退に向かう今、「反日」が崩れれば、中国共産党は人民を支配する「正当性」を失うことを意味します。すなわち、「反日」の嘘が国民に知れ渡った時、中国共産党による一党独裁体制も崩れるのです。

私たち日本人は、今こそ習近平が仕掛ける「反日」に対して、正しい歴史観を持って対峙し、世界と中国に対して、発信していかなければなりません。そのためには、日本の国内において自虐史観を排し、正しい歴史観を国民が共有しなければなりません。

私たち幸福実現党は、「日本の誇りを取り戻す」ことを政策の柱に掲げています。この「日本の誇り」とは、「正しい歴史観」にほかなりません。

日本人が「誇り」を取り戻し、胸を張って「正しい歴史」を世界に発信すること――。それこそが、日本を中国の脅威から守り、中国の横暴を止め、中国共産党の支配の下で自由や人権を奪われている人々を、救う道であるのです。

(終わり)

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