志位和夫委員長率いる共産党が、9月に成立した安全保障関連法を廃案にするため、野党の共闘を目指す「国民連合政府」を構想している。

この構想について、志位委員長がこのほど外国特派員協会で開いた記者会見で、同党の政治方針である綱領に掲げていた「日米安保条約の破棄」と「自衛隊の解消」を棚上げすることを宣言し、野党勢力の結集を呼びかけた。

会見で志位委員長は、「国民連合政府としては、(他党が掲げる政策の)相違は横に置いて、現行の法律と条約の枠内で対応する。日米安保条約については凍結する。廃棄をめざす措置はとらない」と発言。その上で、「自衛隊法がある以上、有事の時に自衛隊を活用するのは当然のことです。現行の日米安保条約の第5条で日本が武力攻撃を受けた際は共同で対処すると述べられています」とした。

日米安保条約の破棄などは、“平和主義"を提唱する「共産党らしさ」の象徴だった。共産党が、そのセオリーをかなぐり捨てて共闘を目指す様子は、政権交代のために集まった寄り合い所帯の民主党を想起させる。

日本共産党は中国共産党そっくり

だが一方で、国民連合政府という構想自体が、ある意味で「共産党らしさ」を示している。

1920年代から40年代の間に、お隣の中国共産党が、国内の統一を優先するため、敵対する中国国民党と2度協力関係を結んだことがある(国共合作)。1度目の協力は、北京を根拠地とした軍閥(軍事勢力)打倒のためだが、2度目は、日本軍を相手に行ったものだ。日本軍が大東亜戦争に負けた後、共産党と国民党は再び対立。共産党が国民党に勝利すると、1949年に中華人民共和国を建国した。

つまり、日本共産党が提唱する国民連合政府は、敵をつくって団結を促した中国共産党のやり方と酷似している。もし安保法が白紙になれば、共産党は再び他党と対立するだろう。

共産党はもともと、安保法案の成立を進めた安倍政権に対し、「立憲主義を守れ」と批判していたはず。安倍首相も、党の綱領を守らないことを宣言してしまった共産党に言われたくはないだろう。本来、他党と結集するのなら、綱領の修正が先ではないか。

やはり国民は、権力のためなら国民をだましてもいいという政治の悪しき風潮を正さなければならない。(山本慧)

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