中国の大手鉄道車両メーカーである中国中車株式会社がこのほど、米エクスプレス・ウェスト社(XpressWest)と共同で、ロサンゼルス―ラスベガス間に約300キロの高速鉄道をつくることで合意した。

習近平・中国国家主席が22日にアメリカを訪問する前に、両国間の経済関係の深化を狙ったものだと、欧米各紙は報じている。

このプロジェクトは50億ドル(約6000億円)規模とも言われ、アメリカ初の高速鉄道となる。着工は、早ければ2016年の9月になるという。

中国側の思惑

欧米各紙の分析によると、中国の思惑は、アメリカの高速鉄道市場を開き、早めに参入すること。アメリカで鉄道建設の実績を積むことで、将来にわたって鉄道建設を受注できる可能性があると考えたようだ。

また、中国はこれまで、国内へのインフラ投資をすることで経済を成長させてきた。しかし現在、誰も使用しない建物が乱立し、その成長モデルにも限界が来ている。そのため、中国側としては、海外にインフラ投資の機会が欲しいところなのだ。

もっとも、海外における中国の高速鉄道の販売実績は最近芳しくない。昨年の11月には、メキシコが中国製高速鉄道の建設をキャンセルした。また、今年の7月にも、タイ国内における中国の高速鉄道建設プロジェクトを拡大する計画を、タイ政府が却下している。

中国に対する不信感

米議会にも、高速鉄道建設という戦略的な事業に中国を参入させることが国益を損なうのではないかと懸念する声がある。

実際、来週に控えた米中首脳会談において、もっとも大きな焦点の一つとなりそうなのが、中国のサイバー攻撃だ。中国は以前からサイバー攻撃などを通して、海外企業の知的財産や、各国政府職員の個人情報を盗むなど、他国の国益を脅かしている。

また、中国の高速鉄道技術にしても、本来は日本やヨーロッパの技術を盗んだものだ。もっとも、技術だけを手に入れても、それを運用するシステムや人間を育てることができなければ、2011年に中国の温州市で起きた高速鉄道衝突事故のようなことにつながりうる。

それに引き換え、日本の新幹線やリニアは、非常に高い性能と安全性を誇る。

中国は、盗用した技術を世界各地に輸出しようとしているが、日本も、インドネシアやアメリカで、日本の新幹線やリニア技術を積極的に売り込もうとしてきた。 日本の鉄道技術は、コスト面では中国に勝てなくとも、安全性と性能の高さで価値があるということを、これからも宣伝し続けるべきだ。(中)

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