左がロウハニ大統領。2013年9月13日に撮影。(画像は Wikipedia より)

増え続ける欧州への難民について、イランのロウハニ大統領は、「世界、特に欧州は支援する人道的、歴史的義務がある」とし、欧州は今後も引き受けるべきだと語った。6日付時事通信が報じた。

これに対して一部のネットユーザーは、「イランが言うことじゃない」「お前が受け入れろ」などと批判。テロリストの温床であり、石油利権で莫大な利益を稼ぐイランが、欧州を非難する資格はないとしている。

また今回の発言に先立ち、欧州では、難民の受け入れに反発する動きもある。数万人の難民が押し寄せたドイツでは、反対デモが起こり、参加者からは「ドイツが築いた富にたかるなんて、許せない」といった声が上がっている。ギリシャなどの財政危機への対応に加え、大きな財政負担につながる難民問題は、大きくクローズアップされている。

ロウハニ大統領は植民地支配を示唆

しかし、ロウハニ大統領の発言には、まったく正当性がないのか。同大統領が指摘した「欧州の人道的・歴史的義務」とは、欧州による中東への軍事介入、ひいては植民地支配の歴史を示唆している。

例えばイランでは、覇権を争っていたイギリスとロシアが、1907年、中央アジアやペルシアをめぐる領土紛争を緩和するため、英露協商を結んだ。これにより、イギリスはイラン南東を、ロシアはイラン北部を、それぞれ勢力下に入れた。つまり、欧州がアジア諸国を好き勝手に国境線を引き、支配したのだ。しかしその後、両国は対立し、第一次世界大戦で武力衝突することになる。

欧州は中東に大きな不幸をつくった

欧州を含む白人国家は、本来無関係である地域を植民地支配に入れ、戦争に引きずり込み、多くの不幸を生んだ。家や財産を失った中東の人々が、次々に飢え死にしたのは想像に難くない。これは中東に限った話ではなく、アフリカ諸国も同じだ。そのアフリカからも、欧州を目指す難民が多くいる。

もちろん、難民が発生する背景には、中東諸国内での政治的・宗教的な対立に加え、経済的な自立が遅れている状況がある面は否めない。その意味で、欧州や日本のネットの反発にも正当性がある。

しかし、歴史的に見れば、難民問題の根底には、白人国家が中東やアフリカの人々を、不幸のどん底に突き落とした過去があるとも読み取れる。欧州は、「歴史の反省」という意義としても、一定数の難民を受け入れるべきではないか。(山本慧)

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