中国チベット自治区のラサで8日、自治区成立から50年を記念する式典が行われた。中国共産党幹部で序列4位の兪正声(ゆ・せいせい)氏など政府高官ら65人からなる中央代表団が参加。当局がラサに大規模な代表団を派遣するのは異例で、当局による関与の強化を示していると言われる。8日付各紙が報じた。

中国がチベットを発展させた?

式典で兪氏は「党がチベットの各民族を指導し、貧しくて遅れた古いチベットを活力あふれた社会主義の新しいチベットに発展させた」などと強調したという。

記念日に先立ち中国は、「チベットでの民族自治制度の成功実践」と題する白書を発表した。自治区成立後の域内総生産が、昨年までに約280倍になったというもの。「自治区になって経済発展した」というアピールは、官製メディアを中心に増えている。

「宗教弾圧」「民族浄化」「言語消滅」

しかし中国の自治区であることは、チベットの人々に幸せをもたらしてきたのだろうか。

内心の幸福という意味で、信教の自由が守られているとは言えない。チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマ14世の写真を持っているだけで摘発され、お経の意味を解説することも禁止されている。

また、チベット人はチベット自治区内でも少数民族になろうとしている。漢人の人口比率が上昇し、当初は少数派だった漢人が、チベット人より多い状態となっている。特に2006年にラサにつながる青蔵鉄道が開通してから、漢人の増加スピードは高い。女性への強制避妊や強制中絶なども報告されており、「民族浄化」とも批判されている。

8月の「中央チベット工作座談会」では「中国語の浸透」が掲げられた。中国語の学習を強制されれば、母国語が失われていく。漢字を暗記するために多くの労力を費やすことになるからだ。これはモンゴル自治区ですでに起きていることでもある。

最初は「欧米から守る」という名目だった

チベットが中国に併合されたきっかけは、中国側がチベットに対して「欧米の帝国主義から守る」と囁いたことだった。チベットに至る道路を中国軍が建設している間、中国と地元民の関係は良好だった。しかし、道路が完成すると、中国軍は大挙して攻めてきて、「自治区」とした。120万人が虐殺されたという。これは、沖縄なども教訓にすべき歴史的事実だ。

当局は経済発展を宣伝するが、その実態は漢民族によるチベットの略奪であり、チベット人は豊かになっていない。中国が内実共に一流国となるためには、人権の価値を理解し尊重する必要がある。日本やアメリカを始めとする先進国は、チベットの人々の人権問題についてきちんと指摘しなければいけない。(居)

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