塾講師の検定を、国家検定にする動きがあるという。検定自体は2008年、民間団体である全国学習塾協会が作ったもので、2017年に厚労省管轄の国家検定になる見込み。ただ、受験は任意だ。朝日新聞などがこのほど報じた。

記事では、塾業界に勤める講師の6割が大学生などの非常勤講師で、授業の質の確保にそれぞれの塾が苦心していると紹介。国家検定で指導力の保証を得て信頼性を高めたい塾業界と、国家検定をサービス業に持ち込むことで、国全体のサービス業の質を上げたい国の思惑が一致したとしている。

「その前に公教育の質を上げるべき」など批判の声

この動きに対し、様々な批判の声が上がっている。

ネットでは、塾講師の質を向上させる前に、公教育の質を上げる努力をすべきだという声が上がっている。公教育が充実すれば、学校の他にあらためて塾に通う必要は生じないからだ。

また、この検定は、基本技能を身に着けた講師養成のために作られたものだが、約30万人いる塾講師のうち、昨年までに受験した延べ人数は、最も多い2級でも924人。受験者数が伸び悩んでいることから、国家検定化は、塾側のニーズでも国側のニーズでもなく、検定協会だけの要望ではないかという批判が出ている。

教える力の高い塾が生まれる仕組みを広めるべき

そもそも塾講師は、常日頃から試験を受け続ける立場であるとも言える。生徒が講師と合わないと感じれば、講師を替えるか、塾を替えるという「判定」がくだる。さらに、生徒が学力を身につけて希望校に合格すれば、その塾の「成果」となり、他の生徒が塾を選ぶ基準となる。こうした意味で、自由競争にさらされている塾の「教える質」の判定は、毎日くだされている。

競争の中で、日々、試行錯誤を繰り返すからこそ「スター講師」も生まれ、受験生はこぞって塾に通う。もちろん、全体の「教える力」のレベルアップは進めるべきだが、教える能力の高い講師や塾が生まれる理由が何かを知り、その仕組みを広めることこそが求められているのではないか。(居)

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