19日、米市場で原油価格が1バレル40.80ドルまで落ち込み、2009年3月以来の安値となったことを、欧米メディアが報じている。

昨年6月には1バレル100ドルを記録した原油価格は、半年で50%以上暴落した。その後、少し持ち直したかに見えたが、最近また下落傾向にある。

なぜ原油価格は下がり続けるのか

一昔前は、「ピークオイル」という考えが世界を騒がせていた。採掘できる化石燃料の量には限界があるため、原油生産量はもうすぐピークを迎え、その後、減少するという考えだ。そのため、「原油価格は上がり続けるしかない」と一部では言われていた。

では、なぜ原油価格は下落しているのだろうか。

まず、生産量が上がっていることが原因の一つだ。アメリカの原油生産量の拡大や、イランの経済制裁解除で、大量の原油が市場に流れ始め、価格に圧力をかけている。

同時に、原油輸入の多くを占める中国経済の失速も理由の一つだろう。中国が発表した第2四半期の7%成長は、海外の識者に懐疑的な目で見られており、コンサルタント会社・ファゾムは、「実際には3%の可能性もある」と英ガーディアン紙が報じた。

需要と供給のいずれも、原油価格下落の傾向性を示している。

経済の多様化に失敗した原油生産国

原油価格暴落によって、もっとも被害を被る国はどこだろう。

特に危ないのが、経済が原油に依存している国々だ。アルジェリア、リビア、イラク、そしてベネズエラなどでは、輸出の90%以上が原油産業から成り立っており、価格の下落は経済に大きな打撃を与えている。

例えば、ベネズエラでは原油価格の暴落のせいで外資が入ってこなくなり、国の社会主義政策を支えることができなくなった。米シンクタンクのケイトー研究所のスティーブ・ハンク教授によると、ベネズエラ中央銀行の正式発表では65%ほどのインフレ率が、闇市場では800%を超えているという。実際、ベネズエラ通貨はすでに「ハンカチより価値が低い」と言われており、同国では物資不足が目立ち始めている。

リビアやイラクの状況はさらに深刻だ。両国ともすでに内戦に苦しんでおり、原油価格暴落による経済危機で、紛争がさらに激化する可能性がある。

同じようなことは、景気が良かったときに外資を大量に貯めこんだサウジアラビアにも言える。同国は現在、貯蓄を食いつぶしながらやりくりしている状態だ。

大量の天然資源を持つ国は、「資源の呪い」に侵されることが多い。資源を売ることでお金が手に入るために、工業化が進まず、経済が多様化しないままになってしまうのだ。

国にとって最も重要な「資源」とは?

天然資源を見つけ、一時的に「天からお金が降ってきた」と思っても、その資源はいずれ底を尽く。長期的な富を生み出すには、国民を教育し、新しいモノを生み出せる人材を育成しなくてはならない。

原油輸出国の失敗から見ても、国が抱える最も貴重な資源は、創造性を持った「人」だということが分かるはずだ。(中)

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