《本記事のポイント》

  • 中国が台湾周辺の海空域で行った軍事演習の完了を発表
  • EEZ内にミサイルが撃ち込まれ、石垣市議会、与那国町議会は抗議決議
  • 「重大な懸念」を伝え「抗議」にとどめた日本政府の弱腰外交

中国軍で台湾周辺を管轄する東部戦区は10日、台湾周辺の海空域で4日間にわたり実施してきた軍事演習を完了したと発表した。

「任務を完了し、作戦能力を効果的に検証できた」とし、今後も台湾海峡における「定期的な戦闘準備パトロール」を続けると宣言。軍事的圧力の常態化を示唆した。

台湾との距離が約111キロメートルと、もっとも近い与那国町では、演習により危害が及ぶ恐れがあるとして漁船が周辺海域への出漁を自粛するなど、大きな影響が出た。また、日本政府や沖縄県から演習に対する情報が入らず、島民らは不安な日々を過ごした。

石垣市議会が臨時会で抗議決議案と意見書を全会一致で可決

演習では、中国軍が発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に複数回撃ち込まれた。これに対し、石垣市議会は8日、まだ演習が続く段階で臨時会を開き、中国と日本政府などに向けた抗議決議案と意見書を全会一致で可決した。

中国に宛てた「中華人民共和国による台湾周辺海域での軍事演習の実施及び我が国排他的経済水域(EEZ)へ向けた弾道ミサイルの発射に対する抗議決議」では、演習に対して「中国による今般のこうした一連の行動は、我が国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であり、本市を含む地域及び国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものである」と指摘した。

そして、「我が国EEZへのミサイル着弾は、八重山圏域の漁業者の安全な操業を脅かし、著しく阻害するものであるが、中華人民共和国外務省の華春瑩報道官が、『両国は関連海域で境界を確定しておらず、演習区域に日本のEEZが含まれるという見解は存在しない』と8月4日の記者会見で述べたことは、中国の権利のみを主張し他国に対して権利を認めない一方的な発言である。中国のこうした一連の行動は断じて容認出来ない」と、中国の姿勢に対し、断固として抗議した。

日本政府や沖縄県などに宛てた「中華人民共和国による我が国の排他的経済水域(EEZ)内外への弾道ミサイルの発射に対し抗議及び対策を求める意見書」では、「中国による今般のこうした一連の行動は、我が国の安全保障及び国民の安全に関わる重大な問題であり、本市を含む地域及び国際社会の平和と安定に深刻な影響を与えるものである」として、「日本国として明確、かつ厳重に抗議するとともに、安全保障体制の強化を図り、八重山郡民が安全に生活し不安に怯えることがないよう、対策を講じることを求める」と結んだ。

与那国町議会も9日、臨時会を開催し、中国による軍事演習に抗議する決議と政府と県に対策を要請する意見書を全会一致で可決している。

すぐに行動することが私たちの任務

石垣市議の友寄永三氏は、臨時会を開催しての非難決議と意見書の採択と可決について、「石垣島はもちろん、尖閣諸島が石垣市の行政区域である以上、私たちにはこの国境の島々を守るという責任があります。抗議決議や意見書を出すことしかできませんが、このような事態の時はパッと対応することが私たちの任務であり、私たちがどう動くかを"見られている"と感じています」と語る。

「もしも、私たちが動かなければ、国や県も『大丈夫なのだろう』という判断の指標にするでしょう。抗議決議や意見書を出すことで、市民や国民の皆様に訴え、国や県を動かすきっかけになればと考えています。中国がまた台湾に軍事行動を起こす可能性はあるので、これからも注意深く見ていきたいと思います」(友寄市議)

中国の軍事演習に対して、日本政府は開始前には「重大な懸念」を伝えたのみであり、EEZ内へのミサイル落下後も、林芳正外務大臣が「わが国の安全保障と国民の安全に関わる重大な問題だ」と述べ、中国側に抗議するとともに軍事演習の即刻中止を求めたと説明するにとどまっている。

一方で、国境を護る島々では、抗議決議や意見書など、可能な限りの行動で危機を訴えている。中国は今回の演習から、今後も台湾への軍事圧力を強めるはずだ。日本政府は今後も国民の命を危険に晒しながら、中国に「重大な危険」を伝え、「抗議」するにとどめるのか。今、日本の"リーダー"の真価が問われている。

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