群馬県・草津温泉の湯滝と灯篭。KIMASA / PIXTA(ピクスタ)
2020年11月号記事
コロナには温泉が一番!
温泉の"霊的効能"
「コロナが収束したら旅行したい場所」の第一位は「温泉」だという。
収束したら? とんでもない。
温泉には、コロナ禍中だからこそ行く理由がある。
(編集部 馬場光太郎)
狭い山道を少し不安になるほど進んだ先に、草津温泉はある。
記者が訪ねた時、すでに夜だった。バスを降り、暗い通りを恐る恐る下る。硫黄の匂いがしてくるころ、目の前が開け、煌々と輝く温泉街が現れる。
街そのものが、常設の縁日のようだ。湯上りの老若男女が、浴衣のまま饅頭や焼き鳥などを食べ歩き、足湯に浸かって語り合う。湯気が立ち込める向こうに、旅館などの橙色の光が滲み、人々は非日常感に浸っている。
そんな幻想的喧噪を静かに見下ろすかの如く、石段を上った高台に寺が立つ。光泉寺─草津温泉の"震源地"は、実はここだ。
奈良時代、この辺りの部落に旅僧が訪れた。村人が話していると、ただならぬ学徳を感じ、ついこんな話を打ち明けた。
昔、神仙が訪れこう語った。「妙薬をこの山に埋め、後の世に、世にもまれなる聖が来るとき、薬湯おのずから開け、必ず衆生の病を治さん」
旅僧は何か考えこんだような様子だったが、翌日、村人に裏山を案内させた。「並々ならぬ霊気を感じる」と、錫杖を地面に立て、祈りを捧げる。すると地面が盛り上がり、蒸気が空高く上がり、滾々と湯が沸き始めた。
僧は人々に寺を建てるよう言い、山号は「大般若経」から一句を取って「草津山」とした。
人々は後に、旅僧が大仏建立を主導し、朝廷から「菩薩」の称号を得たと知り驚く。そう、旅僧とは「行基」のことである。
草津温泉は、この寺の懐から湧く霊泉を、各旅館や浴場に分配していく、というのを基本構造とする。つまり、「華やかな観光地」という装いを一皮はがせば、寺院ならぬ霊泉がひしめく、一大霊場なのである。
草津温泉の中心地・湯畑を見下ろす光泉寺(中央奥)。
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