関西電力大飯原発の再稼働について、滋賀県知事と京都府知事が6日に再稼働の期間を夏場に限定するよう求める提言を出したのに続き、大阪府・市のエネルギー戦略会議も9月下旬に原発再停止を緊急声明で訴えた。

このような動きの背景には、「原発は危険で、廃止すべきもの」という考え方があるのだろう。だが、本当にそうなのか。

昨年7月に亡くなったSF作家・小松左京氏に、「昔の火」(1970年)という短編がある。21世紀、少年たちが岬へキャンプに訪れる。だが、火の不始末により、近くにあった、すでに使われていない石油工場が大爆発を起こしてしまう。リーダーの少年は、すぐに「携帯電話」で警察に通報する(当時、存在すらしていない携帯電話を登場させているところに作者の先見性がうかがえる)。石油を知らずに育った21世紀の少年たちは、昔、「セキユ」という危険な物質が自動車や飛行機に使われていたことを知って驚く。そして、「排気ガスも出さないし、爆発の危険もない」原子力のほうが安全なのではないかと考えるのだ。物語中の21世紀には、「軽くて丈夫で完全な遮蔽物質」が開発されており、使用済み核燃料の再処理法も進歩していることになっているからだ。

これは突飛な話のようだが、実際の問題として、原子力による国内の死者は非常に少ない。1999年の東海村臨界事故の死者は1人。東日本大震災では約2万人が犠牲になったが、原発事故による死者は出ていない。1967年に三井三池炭鉱で起きた炭塵爆発事故では458人の死者が出たことも考えると、原子力に限らず、エネルギーというものはすべて危険なのだ。

原子力は、過去の実績から言えば、石炭・石油より安全だ。日本は、原発からの撤退ではなく、その継続に努力すべきだろう。もう一段、安全性の高い原発を開発し、人類の未来のために役立てることは可能だ。(賀)

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