米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長は11日、訪問中の北京で、中国人民解放軍の陳総参謀長と会談した。南シナ海の領有権問題などで意見が対立し、「米vs.中」の構図が鮮明になってきた。

会談で、マレン議長は、中国と対立するフィリピンやベトナムに引き続き積極的に関与していく姿勢を示した。これに対し、陳総参謀長は会談後の記者会見で、6月以降に米軍が南シナ海でフィリピンやベトナムと共同軍事演習を実施したことについて、「米国は問題に介入しないと言いながら、実際はすでに介入している。(演習の)タイミングは不適切だ」と反発した。(11日付日経新聞)

豊富な海底資源が眠る南シナ海について、中国は核心的利益と位置付け、領有権を主張。対立する国とは、「2国間協議」に持ち込んで自国の主張を押し通したい。一方、米国は、経済的、軍事的に弱い東南アジア諸国が中国の手に落ちることを懸念。米国自らが関与するためにも、「多国間協議」という形をとりたい。

この米中の対立の構図は、米国と共産国・ソ連がぶつかった朝鮮戦争やベトナム戦争の構図に似ている。つまり、南シナ海を舞台に、米国が大事にする民主主義や自由という価値観と、中国共産党が信奉する唯物論・無神論を基礎にした共産主義思想がぶつかっているのだ。ソ連と中国が異なるのは、海外との貿易などで得た富を軍事力に転嫁していく「新型マルクス主義」とも言うべき部分だが、圧政によって人々の自由を奪う「恐怖政治」という点ではまったく同じである。

南シナ海は、日本にとっても石油など海外から輸入される物資が運ばれる大事な海上交通路(シーレーン)であり、その北側には台湾、沖縄が控えている。日本は米国との同盟関係をより強固にして、共にこの海域における中国の圧力を取り除かなければならない。そうしなければ、現在、東南アジア諸国が味わっている苦しみを、数年後には日本が味わうことになる。(格)