《本記事のポイント》

  • 懐かしさを考える別発想
  • レトロフューチャーとは何か
  • ベル・エポックの世界観

さて、今回も前回に引き続き、多くの人が心の中で感じる「懐かしさ」をヒントにした別のアプローチ、すなわち、必ずしも過去、現在、未来と流れる通常の時系列には拘束されない心の中のイマジネイティブな空間演出の具体例に迫りたいと思います。

陳腐化してしまう未来?

この世界での時間は、原則として過去から現在、そして未来へと一定方向に流れていきます。たとえば、現在の延長線上にある近未来に実現すると思われる未来型の家庭生活を表現しようとしたとします。

万国博覧会の会場にあるような1年程度の期間限定のパビリオンの演出なら、ホームオートメーションの進化や各種の家事ロボット等の活躍などで話題性を喚起することは可能でしょう。

ところが、それがテーマパークのアトラクションとなると、コンセプトに合わせてショーセットの内容や各種器具を毎年更新するわけにはいかずに、少なくとも5年、10年と同じ内容でなければならず、現実の世界の技術進化のスピードのほうが上回ってしまうと、現実がすぐに追い付いてしまい、陳腐化した古臭い家電製品が並んでしまうというリスクが常に待ちうけています。

レトロフューチャー

そこで登場した空間演出の発想では、その科学技術の陳腐化問題をクリアするために、始めから現在の延長線上にはない未来を想定し、もう一つの異なった文明の未来として考えるという手法があります。

それは「レトロフューチャー」と呼ばれ、もしかすると存在していたかもしれない別の未来として、過去の時代の人々が想像した未来像、「最新技術そのもの」ではなく「昔の人が憧れた未来感」を楽しむ文化として「懐かしい時代の未来」という世界観を演出するというものです。

アール・ヌーボーのデザイン様式を基に、フランスのベル・エポック時代(1870年代~1914年頃)に描かれた明るい未来観を用いた演出が代表的です。当時のフランスでは、科学と芸術が人類を幸福へ導くという、楽観的な価値観に基づく希望の未来像がありました。

特にフランスの「ディズニーランド・パリ」では、「ディスカバリーランド」というエリアがあり、ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」「海底二万マイル」などのSF小説に描かれた世界観を着想のヒントにした空間演出がほどこされていますし、「東京ディズニーシー」の「ポートディスカバリー」もベル・エポックの世界観に基づく演出になっています。

ほかには、蒸気機関を動力にする時代を題材にした「スチームパンク」という世界観も映画やアニメで根強い人気があります。

SF思考から「来るべき未来」を着想する

ここまで触れてきたようなSF小説に描かれた未来観からヒントを得ることは、実は、テーマパークのコンセプト開発にとどまりません。

現代社会におけるIT産業の技術開発においても、密接な関連性があります。次回は少し角度を変えて、このSF思考や未来学をテーマに、来るべき希望の未来の構想を深掘りしてみたいと思います。

(吉崎富士夫)

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