ヘリテージ財団のリサーチ・フェローのマッケンジー・イーガン氏と、退役海軍将校のブライアン・マクグラス氏が「アメリカの海軍力がなくなる日」という近未来予測を書き、それを防ぐために何が必要かを提言している。

ヘリテージ財団の報告を、アメリカの保守系ニュース誌「ザ・ウィークリー・スタンダード」が掲載した。以下要約。

  • (未来予測部分)2020年に、ヨーロッパの主要国が債務不履行になり、それが金融市場で連鎖し、世界不況に陥る。その後アメリカは米軍の規模を大幅に縮小し、自国防衛のみに焦点を当てる。
  • 2021年に286隻あった海軍艦艇は70隻に減る。核技術者やパイロットを劇的に減らし、すべての空母やほとんどの潜水艦は運用できなくなる。世界の海軍基地は閉鎖され、本土のノーフォークとサンディエゴに戻る。
  • 南シナ海が「中国の海」だという中国の主張が既成事実化する。統一朝鮮は中国と軍事同盟を結ぶ。日本は孤立し、核武装する。インドは、インド洋やペルシャ湾での中国海軍のプレゼンスを受け入れる。
  • (これを避ける方策)この運命が起こらないようにするために、産業界のイノベーションを取り戻す必要がある。無人航空機など新しい軍事技術の開発期間は20年以上になっており、政治指導者らは次世代の艦艇や航空機などの重要技術を手に入れる機会を保障しなければならない。議会は長期にわたる技術開発のロードマップをつくるべきである。
  • アメリカは海洋国家であり、海軍が最も目に見える国力のシンボルである。ワシントンの政策決定者は、平和時にも戦争時にも軍の力を認識し、手遅れにならないようにする必要がある。

アメリカの安全保障の専門家は、米軍を動かす資金がなくなる未来を明確に意識している。これは第二次大戦後のイギリスでも起こった。戦後のイギリスは空母13隻、艦船600隻を持っていたが、国家財政が苦しくなり、運用できなくなった。これをアメリカ政府は何とか避けようとするだろうが、日本としては「アメリカ海軍が東アジアからいなくなる日」に今から備えなければならない。(織)