中国の内モンゴル自治区で、政府当局の圧政に抗議するデモが相次いでいる。

発端は5月11日と15日に、内モンゴル中部の中心都市シリンホトの鉱山地区で、モンゴル族の遊牧民が石炭を運搬するトラックに相次いでひき逃げされ、死亡した事件。これを機に、日ごろから当局の炭鉱の乱開発や人権侵害に不満を持つモンゴル族住民が立ち上がった。

24日には、北東部のウジュムチン右旗地区で住民約1000人が抗議デモを行い、4人が警察に逮捕。25日には、事件のあったシリンホトで学生など数千人が街頭でデモ行進を行い、27日には、事件のあったシリンホトで遊牧民や学生ら数百人のデモ隊が権利の尊重を訴え、300人を超える武装警察と衝突、40人以上が連行されたという。

抗議デモが学生などの若い世代に広がった背景には、ブログや電子メールなどによる情報伝達があるようで、政府当局は大学のパソコンのネットワークを止めたり、モンゴル語のチャットサイトを閉鎖したという情報もある。デモが頻発したシリンホトでは、当局が学生のデモ参加を阻止するため、高校生を学校に集めたまま夜帰さずに“軟禁状態”に置いたり、休日の土曜に登校を命じ、授業が行われたという。

日本で活動するモンゴル自由連盟党のオルホノド・ダイチン幹事長によると、11日にひき逃げされたメルゲン氏は遊牧民の中心的な存在で、牧草地を荒らす炭鉱開発の反対運動の先頭に立っており、故意に引き殺された可能性が高い。今回のデモの背景には、中国政府当局が日常的に、モンゴル族の基本的人権や生命、財産を無視した行為を行っていることへの反発があるという。

同党はこの事件を「5.11惨事」と位置付け、5月30日、世界に散らばるモンゴル族や支援団体と協力して世界中で一斉に抗議活動を実施する。日本でも中国大使館前で抗議活動を行う。

中国政府は、内モンゴルの大規模デモを単なる「反政府運動」ととらえるのでなく、その根本に「自由」を求める思いがあることを理解し、自治区への圧政をやめ、中国自体も民主化の道を歩むべきだ。それが、将来の中国、そして世界の平和と繁栄につながる。(格)

参考:

モンゴル自由連盟党HP「在日モンゴル人の抗議活動(座り込み)のお知らせ」( http://www.lupm.org/japanese/pages/110525j.htm

2011年3月号記事「国が滅ぶ理由」( http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1130

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