26日はチェルノブイリ原発事故の25周年にあたる。先週末にはノーベル平和賞受賞者9人が連名で、31の国に原発を段階的に廃止するよう訴える書簡を出した。これを受けて25日付英紙フィナンシャル・タイムズに「福島はチェルノブイリのように開発を凍結させてはならない」との論説が出ている。以下、抜粋要約。

・受賞者らの書簡は人々が「もっと平和で安全に暮らせるように」としている。だが実際は、原子力を廃止すれば世界の安全性は低下する。世界の電力の14パーセントは原子力が賄っており、予見しうる将来世代において、化石エネルギーも再生可能エネルギーもこの分にとって代わることはできない。エネルギー安全保障においてはエネルギー源の多様性(a diversity of sources)が求められており、原子力もその一つである。

・原子力時代が始まってから今日までの間で、原子力エネルギーが原因で亡くなった人の人数は、エネルギー源の採掘や発電所からの汚染その他を全部含めても、石炭・石油・ガスを燃やす発電によって亡くなった人数より少ない。

・今日の原発における不幸の一つは、チェルノブイリ事故によって新たな原発の承認や建設が凍結されたため、現状の原発の大部分が20年以上も前に作られた旧式なものであることだ。今日の「第三世代」原発は、福島第一原発が津波でこうむったような過熱を避けることのできる冷却システムを備えている。

・もし福島の事故のせいで、チェルノブイリのときのように今後四半世紀も原子力の進歩が凍結されるとしたら、世界にとって恐るべき負の遺産(a terrible legacy)となるだろう。

エネルギー安全保障の観点、原子力による犠牲者が他に比べて少ないこと、新型原子炉の高い安全性などは、日本のメディアがあまり言わない重要な指摘だ。福島第一原発の事故は、「リスクを恐れて負の遺産を遺すか、それとも勇気をもって進歩を進めるか」という問いを人類全体に投げかけていると言える。(司)

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