胡錦濤中国国家主席の訪米にあわせて、中国政府がニューヨークのタイムズ・スクエアの街頭スクリーンに中国の紹介CMを流し始めたと、19日付の米誌ニューズウィーク(電子版)が報じている。しかし記事によれば、中国についての情報を詰め込んだこの60秒のCMはあまりにも不評で、中国国内の知識人からも「こんなことをするなら、人権問題を解決したほうがよほど宣伝になる」という声さえ聞かれるという。

中国の自国PRへの執念には驚かされるばかりである。最近では、プロパガンダなど誰も聞きたがらないという批判もあったが、昨年には新華社通信がCNNを模した英語版チャンネルを開設した。時にでしゃばりと言われようとも、中国語を教える孔子学院に代表される中国のソフト・パワー戦略は、国力の上昇とも相まって効果を表しているように思える。アメリカ人の半数が世界最大の経済大国を中国と勘違いしているのは、以前に紹介したとおりである。

プロパガンダをせよとは言わないが、日本も情報発信力を強化しなければ様々な状況で、中国に押されるばかりになる。それは一連の歴史解釈の問題もそうであるし、昨年の尖閣事件のビデオ公開についても然りである。日本についての生の情報を伝える手段を持つとともに、国として時に言うべきことは言わなければならない。まず発信する情報量が大切である。こちらの考えることをまず公にしていくことが、責任ある大国になるための一歩である。

ちなみに、以前立ち寄ったボストンの大手書店では、中国史に比べて日本史の本は格段に少なく、一番見える場所に目立つように陳列してあったのは、資料の正当性について議論百出の『ザ・レイプ・オブ・南京』であった。こうした日常のワンシーンにも、日中の情報力の差が垣間見える。

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