27日に参議院で審議が始まった安全保障関連法案をめぐり、宗教界からの反対の声が強まっている。

作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが先月、国会前で開かれた安保法案に反対する集会に参加し、反戦スピーチをしたことが話題になった。また、キリスト教の日本聖公会や仏教の真宗大谷派(東本願寺)も、「安保法案は人の命を奪う」「日本国憲法の立憲の精神を遵守するべき」という趣旨の緊急声明を発表し、強く反対している。

自民党と連立政権を組む公明党の支持母体の創価学会も、平和主義をうたい、安保法案に反対している。それゆえに学会員の中には、公明党から離れる動きが広がりつつあるという。

安保法案反対で「真の平和」は得られない

宗教界が「戦争反対」「命を守る」と訴えるのは当然のように思うかもしれない。実際に、インドのガンジーは、ジャイナ教のアヒンサー(不殺生)という宗教的な教えに基づいて「無抵抗、非暴力主義」を徹底した。しかし歴史上、そのような考え方で国民を守ることに成功した事例はほぼ皆無といえる。

特に中国や北朝鮮など、近隣諸国が他国を侵略する野心をむき出しにしている現在の状況を考えると、正当な防衛力を持たないことは、何の抵抗もせずに基本的人権を奪われる危険性を高めることを意味する。平和主義を掲げて安保法案に反対することは、その宗教の思想が現代の国際情勢に追いついていないことを示している。

宗教は独裁国家から国民を守る「最後の砦」

しかし、仏教の基本精神には、「悪を押しとどめ、善を推し進める」という教えがある。野心的に他国を侵略しようとする国に悪を犯させない対策をとることは、仏教的にも正当性がある。

さらに、宗教には、全体主義的・独裁的な軍事国家から、国民を守る役割がある。ナチス・ドイツがユダヤ人を迫害し始めた時、ユダヤ人をかくまったり逃がしたりしたのは、一部のキリスト教会だった。また現代においても、独裁国家の北朝鮮からの脱出を、キリスト教会が助けているという。正しい宗教は、圧政や迫害などから国民を守る「最後の砦」の役割を担っているのだ。

安保法案は「戦争法案」と非難されることがあるが、その本質は、日米が協力して抑止力を強める「戦争抑止法案」だ。日本の平和や国民の基本的人権を守るためにも、人々を幸福に導くという宗教の使命のためにも、安保法案の整備は必須だといえる。(真)

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