米月刊誌「ザ・ニューヨーカー」(7月号)に、米西海岸の巨大地震の可能性に関する記事が掲載されている。

同記事は、日本の東日本大震災を引き合いに出し、同様の地震が西海岸で起きた場合、どの様な被害が出るかについて言及している。

M9.0の地震を起こした地震地帯

「米西海岸でおきる巨大地震」といえば、多くのアメリカ人は、1300キロにわたってカリフォルニア州を縦に横断するサンアンドレアス断層を思い浮かべる。しかし、地質学者の間でより大きな懸念を呼んでいるのが、この少し北にある「カスケード沈み込み帯」だ。 北アメリカプレートの下に、隣接するファンデフカプレートが毎年60ミリほどのスピードで沈み込んでいる。

この地域では、1700年1月26日にマグニチュード(M)9.0の地震が起き、当時バンクーバー島に住んでいた先住民族の壊滅につながったと言われている。さらにその約10時間後、この地震が引き起こした津波が太平洋を横断し、東日本を襲った。

記事によると、カスケード地帯の地質調査の結果、過去1万年の間、41回巨大地震が起きていることが分かっている。平均243年に1回の頻度だ。前回の地震からすでに315年も過ぎているので、明日起きてもおかしくない。

まったく不十分な防災対策

米政府は次の巨大地震に対する準備をしているが、その進展は芳しくない。

この地域でM9.0規模の地震が起きた場合、10メートルから30メートルほどの津波が、15~30分後に米西海岸を襲うと言われている。

しかし、ほとんどの建物は耐震構造ではなく、津波被害が最も大きくなると思われる地域に、学校、電力会社、そして病院などが建っている。また、地震速報システムもないため、実際に地面が揺れ始めるまで、住民が地震発生を知る術はない。

その結果、もし巨大地震が起きた場合に考えられるシナリオは、まず地震によって地域の交通インフラが崩壊し、車が使えなくなる。そのため15~30分後に押し寄せてくる津波からは、足で逃げるしかない。しかし、30分で逃げられる距離はたかが知れているため、多くの人命が失われることになる。

災害の対応を担当している米連邦緊急事態管理庁は、「死者1万3千人、負傷者2万7千人、数百万の難民が支援を必要とする」という結論を出している。

世界的災害増加に備える2つの視点

ネパールで起きた地震など、日本のみならず、近年、地球規模で自然災害が起きている。大規模な地震などに、世界的に備える必要がある。

まず必要なのが、防災システムの普及だ。日本は地震国家であるため、世界一の耐震技術や地震通報システムを持っている。その技術を積極的に輸出し、世界標準にすべきではないだろうか。たとえ数秒であっても、地震が来ることを予測できる意義は大きく、建物や道路が崩れずに車が走れる状態であれば、助かる人間も増えるだろう。

また、災害の背景にあるものにも目を向ける必要がある。日本では古来より、国が乱れているときに、天意として自然災害が起きると言われ、アメリカなどでも、大規模な災害はAct of God(神の意思)と呼ばれることが多い。これは「ノアの箱舟」など、聖書にも通じる考え方だ。

災害に対応する技術を研究するとともに、謙虚に災害の奥にある天意を考え、国の方向や民意に間違いがあれば、それを受け止めるだけの精神性を養うべきではないだろうか。(中)

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