ギリシャの財政支援をめぐる交渉が難航し、同国がデフォルト(債務不履行)を起こす可能性が濃厚になってきたことを、欧米各紙が報じている。

ギリシャ政府は現在、トロイカ(国際通貨基金(IMF)・欧州中央銀行(ECB)・欧州委員会(EC)の三者)と、財政支援の交渉を行っている。ギリシャ側の本音はトロイカからお金を借りたいのだが、トロイカ側は貸し出しの条件として、ギリシャに予算を減らす「緊縮財政」を行うことを要求している。

長年、財政支援を受ける代わりにその条件に応じてきたギリシャだが、「緊縮財政」で金回りが悪くなり、経済が低迷し、失業率も急上昇した。そのため、ギリシャは「緊縮財政」という条件を付けない形で財政支援を受けたいと考えているのだ。「緊縮財政」を求めるトロイカと、それを受け入れないギリシャ国民の間で、ギリシャ政府は板ばさみになっている。

英BBCによると、ギリシャが現在受けている支援は6月30日に期限が切れて終了する。また、ギリシャ政府はこの日に、16億ユーロ(約1900億円)の借金を返済しなければならない。だが、ギリシャの財務省は、すでに財源が尽きたとしている。

抜き差しならない状況を見たマスコミや各国政府の間では、「ギリシャのデフォルト」というシナリオが現実性を帯びてきている。ギリシャ中央銀行にいたっては、デフォルトが「制御不能の危機」を生み出す可能性について言及している。

では、ギリシャがデフォルトを起こしたらどうなるのだろう。まず、ギリシャ一国に限れば、ユーロ圏および欧州連合からの離脱を余儀なくされるだろう。その結果、ギリシャは財政・金融・経済危機を迎え、不況に突入すると見られる。

デフォルトがユーロ圏や世界経済に与える影響は定かではない。「ギリシャの混乱が波及するのを防げる」という主張もあれば、「金融危機を引き起こす」と考える人々もいる。もはやギリシャの経済危機は回避できないだろう。たとえ交渉が成立し、新たな財政支援を受けたところで、ギリシャ経済が回復しなければ、それは単に問題を先延ばししているにすぎない。

しかし、それはギリシャにとってはチャンスなのかもしれない。短期的には多少の混乱があっても、自国の通貨を持つことで"主権"を回復し、福祉国家から、創造性や勤勉性を重視する国へと生まれ変わり、繁栄を目指すチャンスだ。

ユーロ圏という文明実験が失敗した後、ギリシャが他の欧州国家の模範となり、主権国家は本来どのような道をたどるべきかを示すことができる。そんな日が来るのかもしれない。(中)

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2015年6月6日付本欄 ギリシャがIMFへの支払いを延期【Weekly Watch国際政治】

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2015年4月16日付本欄 ギリシャがデフォルトの準備を始めている?【今週の国際ニュース、これだけ】

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9479

2013年5月号記事 ユーロ危機はどうなったの? - そもそモグラのそもそも解説

http://the-liberty.com/article.php?item_id=5793