宇宙航空研究開発機構(JAXA)は種子島宇宙センター(鹿児島県)にロケットの発射基地を2019年に新設すると、4日付日経新聞が報じた。同紙によると、開発中の新型主力ロケット「H3(仮称)」を20年に投入するのに合わせ、現在ある大型ロケット「H2B」の発射台を刷新する形で整備する。

ようやく日本も、宇宙ビジネスへの参画を強化し始めたようだ。政府は、2009年に宇宙開発の国家戦略を示した宇宙基本計画を初めて作成。今年1月、同計画を新たに策定し、その中で宇宙産業の基盤を強化する方針が示された。今回の基地新設もその一環だ。政府は25年までに、宇宙機器産業を現在の3000億円から、米国の宇宙産業市場規模に並ぶ合計5兆円規模への拡大を目指している。

日本のロケットはまだ本数が少なく割高

現在の日本の宇宙開発はどのようなものだろうか。JAXAは14年から三菱重工業やIHIと協力し、新型主力ロケット「H3」の開発を開始。これは国産ロケットとしては最大で、様々な衛星の打ち上げに使用される予定だ。日本としては、発射基地とロケットの機能を高めることで、市場開拓の足掛かりとしたい考えだ。

今まで、日本の主力ロケットは年間の打ち上げ回数が少なく、衛星などによる情報を求める研究機関や企業などのニーズに応えられずにいた。日本の打ち上げは年間5機が最多だが、米国や欧州、ロシアや中国は年間10~30機を打ち上げる。また、打ち上げコストも米ベンチャー企業Space Xが1機あたり約6000万ドル(約74億円)に対し、JAXAの主力ロケット「H2A」は約100億円と割高だ。

JAXAも新発射基地の完成後、打ち上げを年間10機以上、コストも約50億円に下げることを目標とし、ロケットを打ち上げる様々なニーズへの対応を目指す。

活気づく世界の宇宙ビジネス

一方、世界では、米国中心に民間主導の「宇宙ビジネスの黎明期」を迎えている。Space X社はロケットの低コスト化に成功し、NASAと契約を結んでロケット打ち上げに成功している。現在は、人類の火星移住のための輸送システムの確立を進めているという。その他にも宇宙関連分野に民間の起業家が多数参入し、小型衛星、惑星探査、宇宙旅行や宇宙ホテルなどのビジネスを立ち上げている。

世界で宇宙ビジネスが活気づいている背景には、各国が宇宙産業育成のための政策を推し進めたことがある。冷戦時代は、ミサイル開発などの軍事目的や技術競争という意味合いが強かったが、冷戦構造の崩壊後、宇宙技術の商業面にも注目が集まるようになった。その結果、国家主導の大型プロジェクトのみならず、大小さまざまなベンチャー企業が宇宙ビジネスに参入している。

また、宇宙技術は他の産業に転用されることも多い。例えば、宇宙飛行士の飲料水を確保するために開発された水質清浄装置は、家庭用の浄水器に応用された。また、宇宙飛行士同士の通信用に開発されたワイヤレス交信システムから、リモコンなどのコードレス製品が誕生している。

もちろん今でも、宇宙技術は国防のために応用できるという意義も大きい。また、宇宙産業は今後、実際のビジネスとして発展する可能性も大いにある。月や火星などへの移住計画や他惑星での資源獲得、開発競争に乗り遅れないためにも、日本は宇宙産業を新たな基幹産業にすることを国家目標とするべきだ。(泉)

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