中国やアルゼンチンなどが、沖縄の米軍基地について、「県民の自己決定権」や「土地権」、「環境権」などが侵害されているとして、アメリカに改善を勧告した。法的拘束力はないものの、この趣旨を盛り込んだ報告書は、9月の国連人権理事会本会合で採択される見通しだ。20日付琉球新報(電子版)が報じた。

勧告の存在を明らかにしたのは、基地反対派の「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」の島袋純・国連部会長。同会長は19日に沖縄県庁で記者会見し、中国が報告書で「自治、自己決定権を尊重し、土地や環境、言語などの問題に関し、先住民と十分に対話すべきだ」と主張していると訴えた。同会議は、翁長雄志(おなが・たけし)知事を国連の人権理事会本会合に出席させ、基地問題を訴えてもらう意向も示したという。

なぜ中国とアルゼンチンが?

沖縄の基地反対派は、自らの主張を広めるために、国連の判断を盾にしている。

では、なぜ中国とアルゼンチンが今回の要求を出したのか。この背景には、“政治的な意図"が見え隠れする。

アジアの覇権を握りたい中国にとって、その障害となるのは沖縄の米軍基地だ。米軍をアジアから撤退させれば、中国軍の行動が容易になり、自国の影響力が拡大できる。できるだけ米軍を遠のかせることが、中国の利益につながるために、今回の趣旨に賛同した。

またアルゼンチンも、反米左翼であるフェルナンド政権の影響がある。最近では、アメリカと距離を置くロシアに接近し、経済や軍事分野などで協力を進めている。

中国の主張に説得力はない

しかし、そもそも、中国が米軍基地に改善を要求できる立場にあるのか。

中国は、「南シナ海の大部分を自国領だ」と一方的に宣言し、飛行場建設を進めている。この主張こそが、勧告の根拠になっている「土地権」に反する行為ではないか。実際、ASEANも4月下旬に埋め立て工事の中止を求めている。また、中国の建設工事の結果、周辺のサンゴ礁が大量破壊されていることも、「環境権」の侵害であることは明白だ。基地問題で国際批判にさらされている中国に、説得力はない。

今回の勧告は、反米勢力がサポートしたことで出された、極めて政治的なものだ。国連人権理事会は、その勢力に政治利用されている事実に気づき、冷静に判断すべきだ。(山本慧)

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