フランス政府の持つ、仏自動車大手ルノーの議決権が2倍になった。これにより、ルノーへの仏政府の関与が強化される可能性が高まった。2日付各紙が報じた。

フランスは昨年、「2年以上保有する株主の議決権を2倍にする」法案を通し、株主が拒否しない限り、原則適用されることに決まった。今回、ルノーCEOのカルロス・ゴーン氏は同法に反対する動きを取ったが、仏政府が株を買い増しし、その動きを阻止した。

仏政府はこの議決権を利用して、ルノーがフランスでリストラを行いにくくなるよう、圧力をかけると見られている。

ルノーの事実上の子会社である日産は、インド工場で生産していた車種「マーチ」を、2016年からフランスで作る計画だが、今後、仏政府が議決権を行使すれば、日産の経営が圧迫される恐れが高まった。

同法には、欧州債務危機によって、海外からの投資を呼び込まなければ立ち行かないフランスが、自国企業を守ろうとしている面があると指摘される。きっかけは、インド企業が買収したフランスの鉄鋼所を2012年に操業停止した際、失業者が仏政府に対策を講じるよう訴えたことだった。

フランスでは2009年から2013年に、1000人以上の従業員を擁する事業所が700カ所以上閉鎖され、新しく作られる事業所の数を越えた。プジョーと中国企業の提携や、ボルドーの葡萄園の購入など、フランスへの中国資本の流入も急激に増える中で、仏政府の警戒心は当然のものとも言える。

しかし、企業の自由な経営を妨げる同法は、健全な経営を行う優良企業をも敬遠させる恐れがある。また、雇用の確保を海外の企業に頼った上で、雇用を守るよう政府が圧力をかけても、時間稼ぎにしかならない。やがては多くの企業が外資に乗っ取られるか、あるいはすべての企業を国有化するなど、社会主義化するしかなくなってくるだろう。

政府が本当に雇用を守りたければ、旧来の産業にしがみつくことや、外に救いを求めることばかりでなく、新しい産業を生みだすための長期戦略こそ必要だ。フランス経済の再興のためには、弱者を守るだけでなく、国民の自助努力の精神を引き出す策を探していく必要がある。(居)

【関連記事】

2014年11月21日付本欄 日本はフランスを反面教師に 経済低迷を生む「大きな政府」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8791

2014年4月号記事 ユーロ危機って、その後どうなってるの? - そもそも解説 3分で分かる「世界の政治・経済のなぜ」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7419