4月25日(土)より東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか、全国順次公開

今年はベトナム戦争終結から40年の年だ。当時の取材映像を収めたドキュメンタリー映画「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」が25日から、全国で順次リバイバル上映される。

この映画は、第47回(1975年)アカデミー賞(R)最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品。ベトナム戦争当時のアメリカの大統領をはじめとする政治家や、米軍幹部、帰還兵、また、家族を殺されたベトナム人などのインタビューを中心に、実際の戦場の映像で構成されている。

資本主義陣営と共産主義陣営の激突

1960年にベトナムが南北に分かれて始まったベトナム戦争は、アメリカを盟主とする資本主義陣営と、ソ連を盟主とする共産主義陣営との戦いでもあった。アメリカは南ベトナムを支援し、対する北ベトナムは、共産主義イデオロギーを背景にベトナム人による南北ベトナム統一独立国家の建国を求めた。

爆撃を中心とした攻撃を展開するアメリカに対し、北ベトナムはゲリラ戦で対抗し、民間人も多数犠牲になった。最高時には50万人の米軍が投入され、北ベトナムの戦死者は約120万人、民間人の犠牲者も300万人に達したと言われている。

アメリカ側の戦死者は5万8000人あまりで、ベトナム側に比べれば少なかったが、局地戦におけるこの犠牲はアメリカ社会の反発を呼び、1973年には米軍が撤退。1975年4月30日、南ベトナムの首都サイゴンが陥落し、ベトナム戦争は終結した。

戦争ではなく虐殺行為と化していた

映画には、銃を持たないベトナム人が銃殺されるシーンや全身に火傷を負いながら逃げ惑う子供たちなど、脳裏に焼き付くような衝撃的な映像も多く収録されている。ベトナム戦争が、軍隊と軍隊が戦う戦争の一線を超えて、虐殺と化していたことがよくわかる。

印象的だったのは、アメリカの政治家や志願した兵士たちが、「世界の自由を守る」という大義を掲げてこの戦争を始めたと発言していること。そして、その理想とは裏腹に、自分たちが殺しているベトナム人たちが、独立と自由を求めて戦っていたことだ。

アメリカ人である自分たちも、独立戦争を通してイギリスからの独立を勝ち取ったのに、同じように独立を求めるベトナム人を殺している矛盾に、多くのアメリカ人が苦悩する様子が描き出され、アメリカの反省が垣間見える。

冷戦時代、アメリカが自由主義を守り抜き、大国としての役割を果たしてきたことは確かだ。しかし、北ベトナムの殲滅を目指すかのような攻撃は、やはり「やりすぎ」だ。衝撃的な映像が多いため、万人にお勧めはできないが、戦争について、大国の責任について、考えさせられる作品だ。(紘)

【映画情報】

「ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実」ホームページ(劇場情報ほか)

http://heartsandminds.eden-entertainment.jp/site/

【公開日】
2015年4月25日(土)より東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田にて公開
【映画情報】
製作:バート・シュナイダー、ピーター・デイヴィス
(1974年アメリカ映画/112分)
【配給等】
提供:エデン+キングレコード/ 配給:エデン
【スタッフ】
監督:ピーター・デイヴィス/撮影:リチャード・ピアース

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