米大手エネルギー企業クイックシルバー・リソーシズ社がこのほど、連邦倒産法第11条に基づいて倒産手続きを始めたことを、欧米各紙が報じた。倒産法第11条は、企業が経営を立て直すためのものであり、会社そのものはまだ運営を続ける。

同社はシェールオイル・ガスの採掘に力を入れている企業。シェールオイル・ガスは、地下数千メートルまで掘り、そこからさらに横に掘り進むことで資源を採掘していく。既存の石油・ガス田と比べて、採掘にいたるまでのコストが高いため、採掘された資源も高値で売れなければ儲けが出ない。

そのため、アメリカにおいて、原油価格がここ半年で1バレル100ドル以上から45ドル前後まで暴落したことにより、シェール事業の採算性が落ち、経営が立ち行かなくなったエネルギー企業は多い。

今回提出された書類によると、同社は23.5億ドルの負債と12億ドルの資産を持っており、ここ数カ月の原油価格の暴落と負債の山のために、運営が困難になった。

また、アメリカ市場では原油の採掘量が多すぎ、貯蔵する場所が足りなくなり始めている。これが原油価格をさらに低迷させ、エネルギー企業の倒産が今後も続くのではないかと言われている。

これは日本にとって、他人事ではない。クイックシルバー社のシェール開発には、東京ガスも参加しており、2013年に4億8500万ドルを支払って、テキサス州バーネット堆積盆地におけるシェールガス開発事業を行っている。

また、2014年9月、同じように米シェール開発に参加していた住友商事が、2400億円もの赤字を出した後、米シェール事業から撤退している。今後も、日本企業が米シェール開発から撤退する事例が増えるかもしれない。

安倍晋三首相もシェール開発に過大な期待を寄せ、2013年2月に訪米し、オバマ大統領にシェールガスの対日輸出を解禁するよう要請していた。だが、原油価格の低下とともに、それが間違いであったことが明らかになりつつある。

大量の石油を買っている中東も情勢が不安定になりつつあることを考えれば、やはり日本は、採算性が危ぶまれる事業に出資するような賭けに出るのでなく、国内の原子力発電所を一刻も早く再稼働させ、安定的なエネルギーの供給を確保すべきである。(中)

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2015年3月号記事 シェール開発金融に波及するリスク - 原油価格暴落 - The Liberty Opinion 2

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2014年11月25日付本欄 原油価格の低迷でシェールオイルの危機?

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