理化学研究所はSTAP細胞の論文不正問題で、小保方晴子氏に論文掲載費60万円を要求した。研究不正が認定された場合に研究費を請求するという、理研の内部規定による。各紙が報じた。

理研は、小保方氏の2年間の研究に4600万円がかかり、論文の不正調査には3760万円かかったとしている。ただ、故意か否かが明確ではないため、掲載費の支払いは強制ではなく、刑事告発は見送り、研究費用については請求しない。

論文不正問題について、理研は小保方氏の論文を不正と認定し、掲載費を請求することで幕引きにしようとしている。ただ、小保方氏が意図的にES細胞を混入させ、それをSTAP細胞と称したという証拠はなかった。もし、誰か他の人物がES細胞を混入させていたなら、むしろ小保方氏は被害者の1人ということになる。

また、小保方氏が行った検証実験は不十分な条件下で行われたものであり、STAP現象がないと判断するのは根拠が十分ではない。

さらに、「STAP細胞はES細胞だった」という結論も乱暴だといえる。STAP細胞から作られたマウスと、小保方氏の研究室にあったES細胞の遺伝子配列が99%同じだったという理由で、理研はES細胞と結論した。しかし、もととなったマウスが系統的に近ければ遺伝子配列は似るため、根拠としては弱い。そもそも、小保方氏には実験結果を捏造する動機がない。

科学の発見は一番でなければ功績とはならないため、研究発表は可能な限り早く行うべきだが、その際に生じるミスを"不正"と断じて、その責任を研究者に負わせることで、羹に懲りてなますを吹く事例が出てくることが懸念される。いつの時代も、最先端のものの正体を見極めるのは難しい。科学の進歩は、数多くの失敗と引き換えに得られてきた。故意ではない"不正"を根拠に研究費を払わせるのでは、若い人のチャレンジ精神を萎縮させてしまいかねない。(居)

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2015年2月15日付本欄 STAP問題 小保方氏は本当に「捏造の科学者」か?

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2015年3月号記事 STAP細胞は否定されていない - 小保方氏の検証実験終了 - The Liberty Opinion 5

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9086