大塚家具の「お家騒動」が騒がしい。創業者である大塚勝久会長と、勝久氏の長女である久美子社長との間で、今後の経営体制を巡って対立が表面化している。

大塚家具は、1969年に勝久会長が創業した家具販売会社だ。一時期は家具販売業界トップの売上高を誇っていたが、2000年初頭から業界の競争が激化し、現在はニトリやイケアに水をあけられている。

赤字に沈む中、2009年には長女の久美子氏が社長に就任。銀行に勤め、経営者としての経験もある久美子氏はその経営手腕を発揮し、翌年2010年末には黒字に戻した。ところが、昨年7月には勝久氏が社長に復帰することになり、昨年末には再び赤字に転落した。

そこで今年1月、再び久美子氏が社長に就任したが、創業者であり、同社の筆頭株主である勝久氏がこれに異を唱え、「取締役会から久美子氏を外す」ことを提案した。

一方、久美子氏が代表を務める大塚家具の取締役会は、「取締役会から勝久会長を外す」ことを提案し、両者の溝は深まるばかりだ。

背景には、販売方法に関する哲学の対立があるが、本欄では、経営にとって重要な「事業継承」について考えてみたい。

事業継承は非常に大事な経営課題だ。有能な後継者を作れずに失敗し、業績が低迷するケースもある。歴史を見れば、戦国時代最強の武将との呼び声が高かった武田信玄も後継者選びには苦労している。息子勝頼が織田信長に敗れ、甲斐武田家は滅びてしまった。

特に、一代で会社を創り上げたような辣腕の創業社長は、能力に自信があるため、後継者のやり方に我慢がならないことがある。

幸福の科学グループ・大川隆法総裁は、著書『経営入門』で出処進退の難しさについて述べている。例外はあるとしながらも、一般的に年齢的に老いてくると、体力が落ち、判断力が鈍ってくるので、引き際を考えることが重要だとして、次のように指摘する。

「客観的な目で、会社のなかに若い人が育っているかどうかを見て、自分が引くべきところは引かなければなりませんし、仕事を続けるにしても、能力的に破綻しないように仕事を限定していくことが必要です。そのようにして、『あとは後継者に任せる』というスタイルにすることが大事です」

勝久会長は、久美子社長について「悪い子供をつくった」とつぶやいたという。だが、経営者として反省すべきは子育てではなく、事業継承の判断についてだろう。会社は「公器」であり、判断の過ちは社員やその家族、関連企業にまで影響を及ぼすことを忘れてはならない。(佳)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『経営入門』 大川隆法著

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