超常現象を検証するNHK番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」が1月から5回にわたり、「アメリカUFO神話」「NASAの陰謀!?」と題して、UFOにまつわる事件を扱った。

「アメリカUFO神話」では、アメリカにおけるUFO事件の歴史を振り返り、その後、UFOで最も有名な「ロズウェル事件」を2回にわたり解説。UFOと騒がれたものの正体を、米軍が発表した「モーガル気球」だと断定した。また、税金の使い道を調べる米会計検査院が米軍やCIAなどを調査し、「宇宙人が関わった証拠はない」と結論付けたことを紹介している。

「NASAの陰謀!?」では2回にわたり、NASAにまつわる陰謀論として、「人類は月に降り立っていない」とするものと、「NASAはUFO情報を隠している」というものについて、どちらも否定した。「発足以来、多くの人の監視下にあるNASAに隠しごとはできない」というNASAの弁明を根拠にしている。

しかし、「米政府がUFOを隠している」ことを否定するのに米政府が出す情報を根拠として結論付けるのは、検証になっていない。

また、科学的に検証しているように見える部分にも、粗が目立つ。例えば、宇宙船から撮影された、飛び去っていく光の粒が写る映像について、「氷の粒がロケットエンジンの噴射で飛ばされたもの」と説明してUFO説を否定しているが、全く別の方向に飛んでいく光の粒についての説明はない。

無人探査機が撮影した、火星表面の高さ5メートルほどの石板状の物体が「地球外文明の証拠だ」と騒がれた件についても、「石板のように見えるが、カメラの解像度が足りないためであり、実際には丸みを帯びていても石板のように写る」として、正体を暴いたかのように紹介した。しかし、ここから分かるのは、その物体が「石板または丸みを帯びた物体」ということであり、「人工物ではない」と断定するのは、科学的ではない。

同番組は、昨年夏にもUFO映像を「UFOではない」と断定する番組を放送したが、それは「UFOでなくても説明がつく」ことだけを根拠としていた。UFO映像を否定した出演者も、ネット上で「未解明の映像はある」とコメントしているにもかかわらず、番組では未解明のものは紹介されておらず、「否定ありき」のスタンスで制作されていることは明らかだ。

NHKが、こうした超常現象を無視するのではなく、番組を制作すること自体は評価できる。また、「NASAの陰謀!?」の最後に語られた、「分からないものを分かろうとして(論理や科学を)積み上げていく」という姿勢も間違ってはいない。

一方で、番組内でUFOや宇宙人の存在を否定する際の論理が破綻してしまっており、とても積み上げているとは言い難いのが残念だ。論理的・科学的であることは、現代の科学で再現不可能な現象を否定することとは違う。不思議な現象について「否定ありき」ではない中立な態度で検証する番組を期待したい。(居)

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