コペンハーゲンのテロ事件で、ユダヤ教の礼拝所が標的になり、犠牲者が出た。容疑者とイスラム国とのつながりも噂されている。そんな中、イスラエルのネタニヤフ首相はヨーロッパに住むユダヤ人に、イスラエルへの移住を呼びかけている。

ネタニヤフ首相はフランスのシャルリー・エブド事件の直後、ユダヤ人向けスーパーが襲撃された時にも同様の発言をしている。2014年には、フランス在住のユダヤ人の移民が、前年比2倍の約6000人に増えるなど、移住の動きは加速している。

イスラエルは、ユダヤ人にとっては「神から約束された地」である。旧約聖書には、イスラエルをめぐって、ユダヤ人が争いを繰り返してきた歴史が記されている。長年、祖国を失い、放浪していたユダヤ人にとって、イスラエル建国は悲願だった。

ただ、1948年にイスラエルを建国する際、もともと住んでいたアラブ人であるパレスチナ人は排斥されてしまう。その後も、アラブ諸国とイスラエルとの間で戦闘と停戦が繰り返されてきた。1993年にはパレスチナ自治区が設定されたが、合意は守られず、繰り返し戦闘が起きた。

和平交渉を妨げているのは、イスラエルがパレスチナのヨルダン川西岸地区の広い範囲に入植し、住宅地を建設し続けていることにある。そのため、アラブ人の自治が行われているのはパレスチナ自治区の40%にすぎず、広範囲はイスラエルの統治下にある。

ネタニヤフ首相が言うように、ヨーロッパのユダヤ人がイスラエルに移住する動きが加速すれば、問題となっている入植を推し進めることになる。ただ、ユダヤ人の中にも入植に疑問を呈する人々がいる。

その一人は、イスラエルの国立ヘブライ大学の設立時の教授で、正統派ユダヤ教徒のイェシャヤフ・レイボヴィッツ氏だ。レイボヴィッツ氏は1967年にイスラエルがヨルダン川西岸を占領した段階で、「我々はヨルダン川西岸からただちに退去すべき」と提唱。本誌2015年3月号に登場したユダヤ人のナクム・シッカーマン氏は「現在でも入植が問題になっていることを考えれば、先見性のある発言だった」と評価する。

ユダヤ人学者であるハンナ・アーレントもその一人で、「隣人の民族が承認せず、尊敬しないなら、屠殺場になるだけ」との言葉を残している。

大川隆法・幸福の科学総裁は、2014年5月に、旧約の預言者、第二イザヤの霊言を収録した。第二イザヤの霊は、イスラエル・パレスチナ紛争について、「イスラエルのほうが"引っ越し"すべき」として、エルサレムの地に対する執着はないことを明らかにした。

争いの根源は、イスラム教徒であるアラブ人を、ユダヤ教が敵視していることにある。ユダヤ・パレスチナ問題を解消するためには、宗教的寛容の精神によって共存の道を探る必要があるだろう。(晴)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『宗教社会学概論』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1243

幸福の科学出版 『イラン大統領vs.イスラエル首相 中東の核戦争は回避できるのか』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=753

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2015年3月号記事なぜユダヤ人向け食品店が狙われたのか- スッキリわかる中東問題【後編】 Part2

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2015年2月号記事 ユダヤの神の正体とは

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8948

2014年12月号記事 イスラム国 サダム・フセインの呪い スッキリわかる中東問題【前編】 Part2

(元イスラエル大使とパレスチナ大使のインタビューを共に掲載)

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8604