宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3日、小惑星探査機「はやぶさ2」を乗せたH2Aロケットの打ち上げに成功した。はやぶさ2は予定通りの軌道に乗ったという。はやぶさ2はこの後、小惑星「1999JU3」で小石や砂などの試料を採取し、東京五輪が開催される2020年の末に、試料を地球に届ける予定だ。

はやぶさ2は、小惑星の表面を砕き、太陽光などにさらされていない内部の試料を取り出すことに挑戦する。1999JU3には、水や有機物など、生命の起源を解明する手がかりがあると期待されている。初代はやぶさが2010年に試料を持ちかえった小惑星「イトカワ」とは種類が違うため、その組成の解明も期待されている。

初代はやぶさは小惑星との往復を目標にしていたため、行けるところに行ったというのが実情であり、はやぶさ2は、興味深い試料を求めて「行きたいところに行く」(計画責任者の田中均・JAXA教授)のだという。そのため、軌道計算は非常に精密で、最少の燃料で往復できる軌道に乗るために、1日のうちで1秒しか打ち上げにふさわしいタイミングがなかった。地球を周回する人工衛星を打ち上げる場合は、4時間ほど時間に幅がある。もし12月9日までに打ち上げられなかったら、次のチャンスは10年後だったという。

今回、はやぶさ2を軌道に乗せたことで、ひとつめの難所はクリアしたといえるが、今後、次のような課題が残されている。地球からは小惑星の表面の様子が分からないため、はやぶさ2が近づいてから観察し、着陸地点などを算出する。そのとき、地球との交信には往復40分もかかるという。また、小惑星の内部の試料を採取する際には、5キログラムの爆発物を本体から離し、爆発までの40分間で、小惑星の反対側に移動しなければならない。もしも爆発の衝撃を受けてしまうと、機体が損傷し、帰還できなくなる危険性がある。

はやぶさ2には、日本が初めて実用化に成功した、マイクロ波を使うことで長時間稼働が可能になったイオンエンジンや、初代はやぶさで起きた燃料漏れを防止する改良を施した姿勢制御パーツなど、日本の100を超える企業の技術が使われているという。

小惑星から試料を持ち帰るだけでなく、月以外の天体との往復探査に成功しているのは、今のところ日本の「はやぶさ」だけ。アメリカは小惑星の試料を持ちかえる探査機を2016年に打ち上げる予定で、その設計には初代はやぶさが参考にされたという。

地球を取り巻く無数の小惑星には資源が眠っている可能性がある。小惑星探査は、その調査としても大切だ。打ち上げ成功を受けて、研究者らは火星探査への応用に言及しているが、一方で、日本の宇宙計画には、人工衛星やロケット打ち上げの目標数はあっても、宇宙探査の長期計画は具体的になっていない。

アメリカは2030年代、中国は50年代の有人火星探査を目標としている。インドは今年、火星に無人探査機を到達させたが、これは「火星植民計画」の一部だという。日本はせっかく世界一の技術を持っているにもかかわらず、それを活かすビジョンがないのはもったいない。政治家は、この「ビジョン」を示す必要がある。(居)

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