文部科学省の中央教育審議会は21日、小中学校の道徳を教科に格上げするように、下村文部科学相に答申した。

答申では、現行の道徳教育について、「道徳教育の特質を生かした授業が行われていない」「学校や教員によって指導の格差が大きい」など多くの課題が指摘されている。それらの点を踏まえて、新制度では、道徳教育を従来の「教科外の活動」から「特別の教科 道徳」(仮称)へと位置づけを変え、教材として新たに検定教科書を導入することを提言している。

長崎県佐世保市では7月、高校1年生が同級生を殺害するという残忍な事件が発生した。また、文科省の調査によると、2013年度の小学校でのいじめの認知件数が約11万9千件と、過去最高を更新。昨年9月のいじめ防止対策推進法の制定により、今まで表に出ていなかったいじめも含まれていると考えられるが、多いことに変わりはなく、現行の道徳教育では、生徒の心を育むような教育が行われているとは言い難い。

今回のような道徳教育の改革を進める動きには賛同したい。

しかし、道徳は「人を殺してはいけない」というルールを教えることはできても、「なぜ人を殺してはいけないのか」という理由を教えることはできない。

道徳の上位概念には宗教がある。宗教は「なぜ人を殺してはいけないのか」といった、善悪の価値基準を教えるものだ。神仏の心に沿った生き方を目指すことは、世の中に貢献しようというノーブレス・オブリージ(高貴なる義務)を感じる人物を育てることにつながる。世のため人のために奉仕しようという宗教的人格は、人を説得する力や、リーダーとして組織を率いて事業を成功させる力の元にもなる。

日本では公教育の中から宗教的価値観が排除されているが、イギリスの公立学校では礼拝などを含めた宗教教育は義務であり、ドイツでは宗派別の宗教科がほとんどの州で必修だ。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『新しき大学の理念』(幸福の科学出版刊)で、道徳の問題点に関して、以下のように述べている。

「道徳はいったいどこから生まれたものでしょうか。たいていは、過去の、『偉人伝』か何か、そのようなものだと思うのです。それが、すべてのものを包含できるのかどうかです」「道徳のレベルとしては、そういうものをつくったり出したりすることもできるでしょうが、どうしても人間色が強くなりすぎ、普遍性の出にくい面があると思うのです」

道徳教育で偉人の生き方を学ぶことも大切だが、その人生観のベースとなっているのは、多くの場合宗教だ。宗教教育によって、偉人を超えた、神仏の心を知ることが重要だ。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『新しき大学の理念』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1036

幸福の科学出版 『日本陽明学の祖 中江藤樹の霊言』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=892

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2009年1月号記事 世界の宗教教科書を比較する

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2007年6月号記事 なぜ宗教教育は日本から消えたのか (前編)

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